丹波

  • 印刷
たんばコミュニティハブの招いた獣医師が猫の不妊去勢を行う簡易の手術室=丹波市柏原町柏原
拡大
たんばコミュニティハブの招いた獣医師が猫の不妊去勢を行う簡易の手術室=丹波市柏原町柏原
地域猫のため屋外に置かれた猫用の小屋=丹波市柏原町上小倉
拡大
地域猫のため屋外に置かれた猫用の小屋=丹波市柏原町上小倉
不妊去勢手術を受けたと分かるよう耳をV字にカットされた猫=丹波市柏原町柏原
拡大
不妊去勢手術を受けたと分かるよう耳をV字にカットされた猫=丹波市柏原町柏原
猫に全身麻酔をかけて不妊手術をする獣医師=丹波市柏原町柏原、柏原自治会館
拡大
猫に全身麻酔をかけて不妊手術をする獣医師=丹波市柏原町柏原、柏原自治会館
保護猫活動に取り組むNPO法人たんばコミュニティハブが設置したポスター。最近は改善されたが、一帯は以前は「猫捨て山」のような状態だったという=丹波市柏原町
拡大
保護猫活動に取り組むNPO法人たんばコミュニティハブが設置したポスター。最近は改善されたが、一帯は以前は「猫捨て山」のような状態だったという=丹波市柏原町

■「猫捨て山」劇的に改善

 この場所は数年前まで「猫捨て山」だった。兵庫県丹波市柏原町上小倉の「鐘ケ坂公園」周辺。丹波市と丹波篠山市の市境の峠に位置し、桜の名所として知られる。峠を貫く国道176号の騒がしさとは対照的に、公園へ続く脇道に人や車の影はない。

 「夜は真っ暗。人けがないから、いろんな所から人が来て捨てていたみたい。子猫が多かった」。猫の保護活動に取り組むNPO法人「たんばコミュニティハブ」(丹波市)理事長の岩間里美さん(51)が言う。車で数分の距離に、自宅兼団体事務所を構える。

 同団体が公園周辺の夜間のパトロールや動物虐待防止ポスターの掲示などを続け、最近は捨て猫を見かけなくなった。だが団体を立ち上げたばかりの3年前には、捨て猫たちが峠の麓にある柏原町上小倉地区の人里へ下り、繁殖して住民を悩ませていた。

 田畑に残ったふん尿、生ごみあさり、発情期の深夜の鳴き声…。小さな集落内で十数匹にまで増え、人がいる民家の網戸を開けて上がり込むこともあった。国道に飛び出し、交通事故につながりかねなかった。

 猫の繁殖力は驚異的だ。1組のペアが3年後に2千匹になるとの計算もある。放置すれば猫は他の地域に広がり、野良猫の増加は殺処分の増加を意味する。岩間さんは猫の捕獲に乗り出した。

 子猫を含む12匹を捕まえ、全てに不妊去勢手術を施した。次はこの猫たちの行き先をどうするか。ボランティアが保護できる猫の数には限界がある。数匹は「地域猫」にすることになった。

    ■

 地域猫とは、特定の飼い主がいない猫のこと。野良猫を捕まえて手術した後、元いた場所で地域のボランティアが餌やふんの世話をする。活動は、捕獲、不妊・去勢、返還の英語の頭文字を取ってTNRと呼ばれる。繁殖によるトラブルや殺処分を減らす有効な手段で、世界中で導入されている。

 実践には、住民たちの理解は欠かせない。最初は「団体で全部引き取ってくれ」との声もあった。「世話や金銭的な負担を警戒し、最初は嫌がる人も多い」と岩間さん。それでも、住民説明会を開き「猫だけでなく人間の住環境の問題」と説得、自治会の総会で世話に必要な資金の寄付を呼びかけた。

 上小倉地区では現在、地域猫の数は2、3匹で抑えられ、岩間さんも見かけるのは週に数えるほど。地元自治会の飯谷寛二総代(69)は「本当に野良猫が減った。岩間さんの働きが大きい」と話す。一帯は桜の季節には鐘ケ坂公園への通り道で、今春にはドッグランを備えた里山ホテルもオープンした。「地域の外から来る人の印象も良くなったと思う」

 数が減ると、猫はトラブルの種から愛すべき存在になった。住民が「新しい猫が現れた」と教えてくれ、早期の不妊手術につながったり、ボランティア活動の手伝いを申し出る人が現れたり。岩間さんは協力の輪の広がりを感じている。

 「私一人がものすごく頑張るより、住民一人一人が今より少し猫を気にかける方が、よっぽど効果的」

 裾野を広げるため、岩間さんは丹波地域などで地域猫の普及活動や猫カフェと連携した飼い主募集などに力を入れる。「猫に優しい社会は人にも優しい社会のはず」。実現に向け一歩一歩、成果を積み上げている。(那谷享平)

■不妊去勢手術、資金確保が課題

 殺処分を減らすにはまず猫の繁殖を抑える必要がある。たんばコミュニティハブは、保護した猫や地域猫にする野良猫の不妊と去勢に取り組む。2020年4月の発足以来、789匹に手術を施した。

 同団体は月に2回、集団で手術を受けさせる日を設け、うち1回は神戸の獣医師を丹波に招いて柏原自治会館に手術室を設営。もう1回は神戸へと猫を連れて行く。耳の先端をV字にカットするのが「手術済み」の証しだ。形から「さくら猫」とも呼ばれる。

 手術の費用は雄1匹5500円、雌1匹7500円。費用は動物愛護団体や丹波市の助成でまかなうが、団体の持ち出しが生じることも多い。ほかにも保護した猫の餌代や交通費など出費はかさむ。

 代表の岩間里美さんは「自宅を事務所にし、募金や餌の寄付も合わせてやっと赤字がでないかどうか」と話す。資金面の改善に向け、物販の強化などを検討しているという。同団体への寄付はTEL090・3052・3296

(那谷享平)

丹波連載丹波
丹波の最新
もっと見る
 

天気(9月21日)

  • 30℃
  • 25℃
  • 50%

  • 27℃
  • 22℃
  • 50%

  • 30℃
  • 25℃
  • 60%

  • 30℃
  • 24℃
  • 60%

お知らせ