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兒山真也・兵庫県立大助教授に聞く

兒山真也・兵庫県立大助教授に聞く

 六百人を超える死傷者を出す大惨事となった尼崎JR脱線事故。直接的な原因解明が進む一方、事故の背景に見える効率・利益優先などの企業体質の問題が指摘されている。経済性を追求する企業活動の中で、安全性の確立は矛盾する行為なのか。企業評価に安全性を考慮する「安全会計」導入を提唱する兒山真也・兵庫県立大経済学部助教授(交通経済学)に聞いた。(仲井雅史)

 -国鉄の民営化が事故に関係しているとの分析がある。

 「日本の国鉄民営化は成功例として世界的に評価された。この神話が崩れたことは確かだ。だがデータをみると、単純に『民営化によって安全性がおろそかになった』という結論は出せない。JRの列車走行距離百万キロ当たりの運転事故件数は年々減少していた」

 -では、なぜ?

 「JRの事故率は私鉄に比べるとまだ高い。またJRは私鉄より事故が起こりやすい踏切を多く抱えるなど“不利”な環境にある。にもかかわらず、事故の減少傾向が経済性と安全性を私鉄より高めた-とJR側の自信を深める材料になり、そこにおごりが生まれたのではないか」

 -おごりは組織を変質させる。

 「上司が決めたことは正しく、部下は指示を着実に守る。おごりは、企業内にこうした強権的な体質を定着させる。現場は臨機応変な対応ができなくなり、肌で感じた危険の改善提案も出しにくくなる」

 -強権的態度は乗客に対しても。

 「そう。例えば駅の乗降時間。JRはどれくらいの余裕をみているか。自分たちが決めた時間内に乗客は乗降するはず、すべきだ、との考え方に基づいた設定がなされてはいなかったか。事故路線のダイヤは過密というほどではない。運行本数より、乗降時間の余裕の設定が運行の時間厳守を難しくした可能性も検討すべきだ」

 -時間設定は効率や経済優先の結果でもある。

 「確かに経済優先の批判はまぬがれない。一方で、企業が経済性を求めるのは自然な行為。そこで、リスク回避の投資が利益と見合うか、との企業判断が行われる。JRも宝塚線(福知山線)に最新型の列車自動停止装置(ATS-P)の設置を予定していたが、優先順位は低かった。リスクに対する判断の甘さと言われても仕方ない」

 -甘さをどのように監視するのか。

 「会社の評価に『安全会計』を導入するのが有効。これは、企業の社会的責任投資の観点から導き出される考え方だ。近年定着しつつある『環境会計』では、環境に配慮する企業がイメージをアップさせ、株主や顧客の評価を高める重要な要素となっている。同様に安全への投資が市場評価の向上につながるような仕組みができれば、経済性と安全性の追求は矛盾しない」

 -「安全会計」は定着するか。

 「かつて環境対策に投資する企業はなかった。安全会計が市場判断の材料として重視される土壌は育ちつつある」

▼こやま・しんや 1970年、奈良県生まれ。京都大卒、銀行勤務後、京都大大学院経済学研究科後期課程退学。神戸商科大講師を経て、2004年より現職。

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