鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。
サンテレビ社長退任のタイミングで、高さが腰までもありそうな大きな荷物が届けられた。送り主は、「獺祭」で有名な旭酒造の桜井博志会長だった。桜井会長は今は亡き勝谷誠彦さんの番組に何度か出演してもらったご縁もあって、東京、大阪でのパーティーに招待していただいたり、神戸で食事を楽しんだり、おつきあいをさせていただいている。
私の退任を聞いて、桜井会長がすぐにスタッフに記念品を贈るように、と声をかけて届けられたものだというのはサンテレビの担当者から聞かされた。
包みを開けると、通常の一升瓶のサイズからすると1.5倍はありそうな巨大な桐の箱が現れた。見事な達筆で私の名前と労をねぎらう短いメッセージがしたためられている。
中から現れたのは見たこともない大きな瓶に詰められた「獺祭」だった。担当者に聞くと、これは特別に受注生産だけで造られる「獺祭マグナム」という酒で、中身は最高級品の「磨きその先へ」なのだという。品のない話だが、ネットで調べてみると20万円近い価格で取り引きされている。
丁重にお礼状を送った。残るはこの酒をどういう場で開封するか、という問題だった。友人にも声をかけたが、それはご家族でいただくべき、と尻込みされた。結局、桜井会長との縁ができた番組の担当者に声をかけ、自宅に集まってもらって「マグナムの会」を開くことにした。
当日、午前11時に集まったのは自分を含めて4人。家族が外出する日を選び、料理はすべて自らが手掛けた。開宴前にマグナムを冷蔵庫から取り出し、桐箱と並べると、期せずしてお~っという歓声が上がった。
ビールでの乾杯に続き、マグナムの栓を開けた。メンバーのひとりがバッグから試験管を少し大きくしたような容器を2本取り出し「なくならないうちに確保しておいてあげないと」と酒を満たし、バッグにしまった。当初参加予定だったが急な都合で集まれなかった同僚2人への土産がわりだという。
いまや中国でも引っ張りだこだという当代一の人気の日本酒の、しかも特別の中の特別の一献。桜井会長の温かな心遣い…その味を表現する言葉など見つからない。
話は弾み、手作りの料理はすべて平らげられ、まさかとは思ったが2.3リットルの巨大ボトルもほどなく空になった。
桜井会長は昨年、豊中市に本拠を置く日本センチュリー交響楽団の理事長に就任、その仕事で関西を訪れる機会も増えていると聞く。この心遣いには及びもつかないが、何か楽しい時間が用意できれば、と思う。
(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)
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