■契約社員の正社員登用試験と派遣スタッフの新規契約が中止に
Aさん(関東在住、40代、会社員)は営業として、日々の受注管理や請求書作成、領収書管理などさまざまな事務作業をサポートしてくれる事務スタッフと一緒に仕事をしてきました。取引社数が多く、発注頻度も金額もさまざまで、外回りをしていることが多いAさんにとって、優秀な事務スタッフは売上金額を左右する大事な存在です。事務スタッフは昔から新卒採用ではなく、拠点ごとにハローワークで契約社員として募集したり派遣会社に依頼したりしてきました。その中で特に優秀で長く働いてもらいたい人がいれば、正社員登用試験を勧めることもあり、優秀な人材を確保できていました。
そんなAさんの職場にAIツールが導入されたのは1年前のこと。手書きの発注書や領収書などをスキャンするだけでCSVに変換する、お客様からの問い合わせ・発注メールへの返信内容のドラフトを作成するなど、これまで事務スタッフが担ってくれた作業部分の多くを代替してくれるようになりました。繁忙期には残業も多く発生していたのが「最終チェック」だけになったことで明らかに負担は軽くなったそうです。
「作業が明らかに軽減したことで、余力を持たせて繁忙期や急な退職などに備えておかなければならない、と考えなくなった感じです。今年度に入って、人員配置の基準が変わり、最初に派遣スタッフの依頼がなくなって、契約社員の正社員登用試験制度の案内がひっそり社内ネットワークから消えました。次は営業の仕事がどう変わるのか、ちょっと怖いなと思っています」
AIツールを上手く導入できた会社では、人材採用にも大きな変化が出ているようです。
■ウチの社長はAIに期待しすぎてる
Bさん(関西在住、30代、会社員)がお勤めの会社は社員数30名前後の中小企業です。社員数が多くないこともあり、社員一人ひとりの業務範囲は広く、Bさん自身もいわゆる「総務・経理・人事・カスタマーサポート」の「1人4役」状態で仕事をこなしています。
そんなBさんの働く会社の社長の最近の口癖は「わが社もAIをどんどん活用していこう!!」調べものにChatGPTを使い始めて「便利だ!!」と思ったらしく、会社のアカウントで有料プランを契約したからどんどん使うように!と通達がありました。
先日は「会社のホームページがだいぶ古い。昔HP制作業者に作ってもらった時は数十万したけれど、今ならAIで簡単に作れるらしい。よろしく頼むよ」と言われたBさんでしたが…。
「調べてみたら、確かに『作り方』はわかりやすく教えてくれるけど『作っておいてね!』っていえば朝にはホームページが勝手に変わってるわけないじゃないですか。そんなに劇的に任せられることが増えるわけじゃないのに。そんなに簡単なら自分でやってほしいですね!」
期待度だけが大きくなって、実際は何にも役に立っていない、そんなケースもまだまだありそうです。
■大企業ほどAI業務影響アリ!?
株式会社マイナビが発表した「企業人材ニーズ調査 2025年版」によると、全国の採用担当者2101名のうち「AIによる業務代替の影響により、自社で現在雇用している従業員の人員削減の可能性」について「既に人員削減への影響が出ている」と回答した企業が12.3%にのぼりました。さらに「現時点で人員削減への影響は出ていないが、今後は影響がありそう」と回答した割合は22.9%となっています。
この回答の内訳として、従業員数300名未満・300~999名・1000名以上で分類したところ、企業規模が大きい企業ほどAIによる人員削減への影響が出ている割合が高くなっています。
大企業ほどAI導入が進んでおり、業務代替の範囲が広い傾向があるようです。
【参考】
▽株式会社マイナビ-「企業人材ニーズ調査 2025年版」
◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。
























