保護した黒猫は大けがをしており、捕獲後すぐに手術をした。想像を絶するような酷いけがだったが、順調に回復。初参加の譲渡会では運命の出会いがあり、心優しい家族に迎えられた。
2022年4月のある朝、兵庫県西宮市在住の方から相談が入った。
「数日前から猫が自宅前の排水溝でうずくまっている。どうやら足を負傷しているようだ」
そのころは雨が続いていたこともあり、わたしたちは急いで捕獲することにした。昼すぎに現場に着くと、猫は負傷しているようで排水溝でじっと固まっている。捕獲に際しては猫に食事を与えないようにと事前に頼んでいた。すぐに餌を入れた捕獲器をセット。しかし、猫は警戒して出てこない。わたしたちは少し離れた場所に身を隠し、見守ることにした。
しばらくして黒猫は腹を空かせていたためか、排水溝から出てきて恐る恐る捕獲器の餌を食べ始めた。
「けがをしているので、絶対に保護をしないといけない」
わたしたちは祈るような気持ちで見守っていた。猫は捕獲器の中の餌を食べながら少しずつ前進していく。あと少し。しかし、猫は外に出て逃げてしまった。
「あぁ!」
焦る気持ちを抑え、猫が出て行った方に目をやると、また排水溝に戻ってじっと佇んでいた。捕獲器に餌を追加して再度待機すると、救いを求めるかのように今度はすんなりと中に入ってくれた。
猫は小柄な黒猫だ。車にはねられたのか、足と尻尾の外傷がとても酷い。よく見ると右後ろ足と尻尾の先端が欠損して血が出ていた。
「急がなければ、命にかかわる」
そこで、過去に猫の断脚手術などで、お世話になった京都府にある動物病院へ相談をした。スマホで写真を送信して外傷を確認してもらうと、すぐに手術をした方がいいと返事があった。その日は、宝塚にあるわたしたちのシェルターで1泊。次の日の朝、京都の動物病院へ向かった。
しかし、負傷個所は思っていた以上に酷く、断脚・断尾手術をすることになり、入院を余儀なくされた。右後ろ足はかかとまで複雑骨折しており、かなりの出血から貧血がひどく、痩せて脱水していた。
幸い、手術は無事に成功し、傷跡もきれいに縫合してもらい、ホッと安心したのを覚えている。術後の回復も順調で、4日後に退院することが決まった。その間、猫は病院スタッフに甘えるようになった。
退院のため迎えに行った時は、スタッフの肩に登ったりするほどの人懐っこさを見せてくれた。その姿を見て、わたしは「けがが完治したらすぐに里親募集ができそうだな」と安心した。
退院後は、シェルターで生活をする事になった。猫は片足と尻尾がなくなり、3本足で帰ってきた。分かっていたとはいえ、見た目は手術個所の毛がなかったりと少し痛々しい。しかし、救われる点もあった。とても元気で凄く人懐っこい性格と、小柄な体型が可愛らしい。特に、くるんとカールした耳が特徴的で、名前をわたしたちは”カール”と命名した。
2週間の隔離期間を経たカールは、足の状態が落ち着くと譲渡会に参加することになった。譲渡会では、人一倍懐っこい性格が幸いし、たくさんの申し込みが入った。
まだ手術した部分の毛が生えきっていない状態だったが、カールのハンデを受け止めてくれる優しい人達には感謝しても感謝しきれない思いだった。申し込みの中からカールのトライアルをこちらで決めさせてもらった。
そのトライアル先には先住猫がおり、相性がうまくいくかを見定めてもらうことになった。カールは順調に新しい環境に慣れ、シェルターでは見せなかったヤンチャぶりを発揮していた。オモチャをどんどん破壊しているそうだ。
一方、先住猫とは順調に、とはいかなかった。カールが近づくと威嚇をし、逃げてしまうという。先住猫のお気に入りの場所を奪ってしまうこともしばしば。しかし、ご飯だけはきちんと先住猫に遠慮して順番を譲るのだという。
猫同士がどう思っているのか分かりかねる部分はあったが、近い距離で寝たり、同じ空間で問題なく過ごせるようになったことで、無事に正式譲渡となった。大けがを負い、片方の足と尻尾をなくしてしまうという、つらい目に遭ったが、いまでは優しい家族に囲まれ、幸せに過ごしている。
(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)
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