阪神・淡路大震災から五年を前に、神戸新聞社は震災二年目から定点調査を続けている神戸市内の激甚被災地二地区を対象に、「震災五年・被災者追跡アンケート」を行った。公的仮設住宅がほぼ解消し、被災地最大の課題だった「住」の問題が大きく前進したが、調査では、元のまちに戻った人の四割が「昔より住みにくくなった」と答えるなど、地域コミュニティーの再生という新たな課題が浮き彫りとなった。また、七割近い人が「震災前より年収が減った」と回答。復興状況についても「遅れている」「取り残されている部分がある」が計六四・二%と昨年と比べて前進がなく、被災者が復興の停滞を感じている姿が伝わってくる。
調査は昨年十一月に実施。約九割の家屋が全焼・全壊した神戸市須磨区の千歳地区と、死者二百五十九人を出した東灘区の深江地区の計五百世帯にアンケートを郵送した。回収率は三七・四%。
調査結果によると、復興区画整理事業の仮換地指定を待つ人以外は、自宅を再建したり、公営・民間住宅に入居するなど、恒久住宅への移行がほぼ終了したとみられる。
しかし、全壊(焼)した家を再建し、元のまちに戻った人の四三%が震災前より「住みにくくなった」と答え、これからのまちの姿についても三七・六%が「住みづらいまちになっていく」と否定的な見方を示した。その理由として、「かつての隣人が戻ってこない」「近所付き合いが減った」など地域コミュニティーの問題を指摘する声が多く、住まいの確保以後のまちづくりの課題が浮かび上がる。
仕事については、勤めを持つ人のうち「震災後に失業を経験した」と答えた人が二一・一%に上った。小売・自営業者では、仮設店舗を合わせると四分の三が営業再開にこぎつけたものの、うち三五・一%の業者が「年収は震災前の半分以下になった」と回答。さらにサラリーマンも含め、調査対象者の七割近い人が「震災前より年収が減った」と答えるなど、長引く不況の厳しさが被災地に重くのしかかっている。
また、国や自治体に対する要望では、昨年に続いて「公的支援の継続・拡充」「景気対策」が上位を占めた。作家の小田実氏らが実現を求めている、災害被災者に最高五百万円を支給する「生活基盤回復援護法」についても七三・七%の人が賛同している。
2000/1/12