社説

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 運転停止中の東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)が、再稼働に必要な原子力規制委員会の審査に合格した。

 東日本大震災以降、審査に合格した原発は16基にのぼるが、今回の女川は特別な意味合いを持つ。震源に最も近い上、過酷な事故を引き起こした福島第1と同じ沸騰水型の原子炉を用いているからだ。

 約13メートルの津波が襲いながら、高台にあり福島第1のような事態には至らなかった。しかし安全対策費は3400億円と当初の想定を超え、さらにテロ対策設備費として数百億円が見込まれる。かつて国や電力業界が力説した原発の経済性は、もはや色あせている。

 規制委は数カ月後には正式合格を決めるが、東北電力が地元と結んだ安全協定により、実際の運転開始には宮城県や女川町、石巻市の同意が必要になる。知事や市長、町長は賛否を明確にしていない。

 なぜ今、再稼働が必要なのか。東北電は地元の疑問に真摯(しんし)に答える必要がある。

 女川原発を巡っては石巻市の住民団体が、再稼働に向けた地元同意の差し止めを県や市に求める仮処分を仙台地裁に申し立てている。

 福島第1のような重大事故を想定して市が作成した避難計画に、不備があるとの理由だ。14万5千人の住民がバスや車で仙台方面に向かう内容だが、実際に訓練した結果から、交通渋滞やバスの不足で避難が滞る可能性を指摘する。

 宮城県議会は否決したが、再稼働の是非を問う住民投票条例案の請願には11万筆を超す署名が集まった。住民の間に安全性への不安などが根強いことをうかがわせる。

 県や各市町が再稼働に同意するなら、実効性のある避難計画を策定するのが大前提だ。

 規制委による女川原発の審査は約6年と過去最長に及んだ。地震や津波に耐えたことを強調する東北電と、安全性に対する認識の溝が容易に埋まらなかった。

 「3・11」を境に、原発に対する住民意識は一変した。そのことを東北電は直視して、「想定外」も見据えた対策を講じねばならない。

 女川原発では、隣接する1号機の廃炉が決まった。東北電の計画では34年かかり、400億円超を費やす。一方、原発の運転に伴って生じる放射性廃棄物は、最終処分のめどが立たない。

 前に進むのも退くのも、原子力発電には多くの障壁が立ちはだかる。風力や水力、地熱、バイオなどさまざまな再生エネルギー技術が進化する中で、そのあり方を社会全体が考え直すときだ。

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