社説

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 NHKの上田良一会長が退任することになり、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸(てるのぶ)氏が後任会長に決まった。来年1月25日に就任し、3年の任期を務める。

 「権力を持った政権が報道機関からチェックされるのは当たり前。きちっとした距離を保つ」。前田氏は記者会見でそう断言した。

 NHK会長は、公共放送を担う執行機関の総責任者だ。その姿勢は取材・報道、制作の現場に影響を及ぼす。番組編集の自由を守り、国民の「知る権利」に応える責務があることを、深く自覚してもらいたい。

 近年、NHKの報道姿勢は「政権寄りだ」と批判されてきた。視聴者が疑問を抱く理由の一つが、前会長である籾井勝人氏の言動だった。

 典型例が2014年の就任会見である。「政府が右と言うことを左と言うわけにいかない」と述べた。

 当時は特定秘密保護法が国会で成立したばかりの時期だ。NHKの報道が少ないのではと問われ、「法案が通っちゃったんで、もう言ってもしょうがない」と語った。

 放送の自主・自律への理解が乏しく、政治的中立性に欠ける。私的に使用したハイヤー代を請求するなど組織運営でも疑問符が付いた。

 現在の上田会長は元三菱商事副社長で、立て直しを期待され、NHKの経営委員から就任した。だが生命保険の不正販売を報道された日本郵政グループの抗議を受け、事実上の謝罪をしたことが発覚した。

 経営委員会も上田会長を厳重注意するなど、ともに外部の圧力に屈した形だ。これでは現場で頑張る職員らの立つ瀬がない。

 日本郵政の副社長は、NHKの監督官庁である総務省の元事務次官が務めており、「公正・公平」への信頼がさらに揺らいだと言える。

 NHKは、テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」の来年4月実施を目指している。一方で受信料収入は過去最高を5年連続で更新し、18年度は初めて7000億円を超えた。

 肥大化を懸念する総務省の意向でNHKは同時配信の経費を削減するなど計画の見直しを進めている。独り勝ちを危惧する民放や、受信料を負担する視聴者の理解を得るには、信頼回復の努力が欠かせない。

 財界出身の会長就任は前田氏で5人連続となる。籾井氏も安倍晋三首相との距離の近さが取りざたされたが、前田氏も首相を囲む財界人の勉強会に参加していた。

 「どこかの政権とべったりということはない」と語った言葉を、近く就任する次期経営委員長と共に、権力におもねらない「不偏不党」の報道と番組作りで証明してほしい。

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