社説

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 欧州連合(EU)からの離脱を最大の争点とする英下院の総選挙は、ジョンソン首相率いる保守党が過半数を大幅に上回る議席を得て圧勝した。少数与党を脱したことで、2020年1月末の離脱を掲げた公約の実現は確実な情勢だ。

 最悪のシナリオである「合意なき離脱」が回避される見通しとなり、国際社会には安堵(あんど)の声が広がっている。EUのミシェル大統領は「われわれは次の段階への用意ができている」と期待をにじませた。

 「離脱」を決めた国民投票から3年半もの間、与野党の協議が進まず、英議会は混迷を極めてきた。当初今年3月29日だった離脱期限は3度も延長されている。改めて英国民は離脱の意思を示したことになる。EU加盟国で初の離脱という困難な課題を克服できるか注目したい。

 最大野党の労働党は惨敗を喫した。若者を中心にEU残留を求める声が根強く、二大政党の勢力が伯仲するとの予測もあった。

 しかし実際は労働党が地盤とする選挙区で、保守党が議席を奪うケースが相次いだ。閉塞(へいそく)感を打ち破ってほしいとの期待が、保守党の追い風になったとみられる。

 一方、労働党は離脱派と残留派をともに党内に抱え、離脱への主張を明確に示せなかった。EU残留に道を残す国民投票の再実施を公約に掲げたが、票を伸ばすことができなかった。

 ジョンソン政権は、既に離脱条件に関する合意案をEUと妥結している。今回、議会の主導権を握ったことで、合意案に基づく離脱関連法案を速やかに成立させたい考えだ。

 懸念するのは、離脱が英国の社会や経済に及ぼすデメリットについても、ジョンソン氏がどれだけ率直に国民に説明できているかという点だ。選挙戦では失言を恐れてか、各党党首によるテレビ討論への参加をなるべく控えていた。

 国民投票では、離脱による得失が英国社会に十分共有されていなかったとの指摘もあった。ジョンソン氏は過半数にあぐらをかくのではなく、野党とも十分に議論を深め、有権者に理解を求めようとする姿勢を欠かしてはならない。

 離脱に際しては、経済環境の激変による影響を緩和するため、20年末までの移行期間が設定される。英国がこれまでと同様に自由貿易の恩恵を享受するには、EUと十分な協定を結ぶ必要がある。残された時間は極めて少ない。

 ジョンソン政権にとって何より重要なのは、離脱の賛否を巡って国民の間に生じた分断を修復することだ。英国が「民主主義の模範」であり続けられるかが試される。

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