米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として政府が進める名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事は土砂投入開始から1年を経過した。
2月の県民投票では「反対」が7割を超え、民意は明確に示されている。だが普天間の危険性を除去する「唯一の解決策」とする国の姿勢は変わらず、埋め立て認可を巡る県と国の法廷闘争は、歩み寄りの兆しすら見えない。
埋め立て予定海域には「マヨネーズ状」の軟弱地盤が存在する。政府は砂を締め固めたくい7万7千本の打ち込みを検討しており、この工事だけで約3年8カ月を要する。
国は当初、工期を8年としていたが、軟弱地盤はその後に判明しており、12年近くに延びそうだ。
辺野古の総工費について政府は当初「少なくとも3500億円」としてきたが、地盤改良の追加費用は示していない。沖縄県の試算では最大で約2・7兆円に膨れあがる。
地元が反対する公共事業に巨費を投じ続けるのは、地方分権や民主主義に基づく政治とはいえない。
工事は計画より大幅に遅れ、県の推計では必要な土砂の1%しか投入できていない。貴重なサンゴの海を埋め尽くしてしまう前に、政府は事業の是非を考え直すべきだ。
政府は年明け以降、改良工事を沖縄県に申請する。軟弱地盤へのくい打ちは「技術的に不可能」とする専門家もいるが、防衛省が設けた有識者会議は「可能」と判断した。
玉城デニー知事は認めない構えを示す。だが、政府は違法確認訴訟などの対抗措置も辞さない姿勢で、国と県の対立激化は避けられない。
国は2013年の仲井真弘多元知事による承認を埋め立ての根拠としている。玉城知事は昨年、これを撤回したが、今年になって国土交通相は撤回を取り消す裁決を下した。これを違法とする県の訴えを、福岡高裁は却下した。
この間も国は工事をやめず、既成事実化を急ぐ。県は有力な対抗策を見いだせずにいるのが実情だ。
対照的なのは、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の秋田市への配備計画だ。防衛省の調査ミスが判明し地元の批判が高まると政府は計画見直しの検討に入った。
本土と沖縄で対応を変えながら、政府が事あるごとに「沖縄に寄り添う」と主張するのは理解に苦しむ。
13年の日米合意では、辺野古完成後も普天間が返還されない可能性が記されている。そうなれば負担軽減どころか、新たな基地を増やす結果になりかねない。
民意を無視し、巨額事業をなぜ強行するのか。沖縄県民だけでなく国民の多くが同じ疑問を抱いている。








