社説

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 広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転を差し止める仮処分を決定した。昨年3月に山口地裁岩国支部に運転禁止の申し立てを却下された山口県の住民3人が即時抗告していた。

 高裁決定は、主な争点だった地震と火山のいずれにおいても被害の想定や調査が十分でないと明確に認めた。四国電側の「全面敗訴」といえる。安全性に問題がないとして、再稼働審査に合格させた原子力規制委員会の判断にも誤りや欠落があったと指摘した。

 伊方3号機の運転を禁止する司法判断は、2017年の広島高裁仮処分決定に続き2回目となる。

 四国電と原子力規制委は高裁決定を重く受け止め、伊方3号機の災害リスクと安全対策を厳しく見直さねばならない。全国のほかの原発の再稼働を巡る審査についても検証し、抜本的に改めるべきだ。

 佐田岬半島にある伊方原発のすぐ近くには、日本最大級の断層帯である中央構造線がある。以前から住民や地元の専門家は、原発直近に活断層が存在する可能性を訴えてきた。

 高裁は住民側の主張を認め、四国電が活断層についての調査を十分にしないまま、再稼働の安全性審査を申請していたと批判した。

 約130キロ離れた阿蘇カルデラ(熊本県)の噴火のリスクについては、発生頻度が高い大規模噴火に焦点を当てた。火山からの噴出量は四国電想定の3~5倍に上るとし、四国電が示した降下火砕物や大気中濃度が過小、と判断した。

 より被害が大きく発生頻度が極めて低い「破局的噴火」を重視した前回の高裁決定は、18年の異議審で退けられている。今回は火山リスクを現実的な規模で再評価した上で、四国電の甘い想定を前提とした規制委の判断は不合理とした。

 繰り返される差し止め仮処分は、火山や地震という災害リスクを評価しきれないまま再稼働が進められてきた原発の現状を浮き彫りにする。

 政府や電力業界は規制委の審査を「世界で最も厳しい基準」と称する。だが、津波も含め日本の原発が世界で最も過酷な自然災害のリスクを考慮せずに建設されてきた現実と向き合っていないのではないか。

 政府は、リスク評価が定まらない原発を電力を安定供給する「ベースロード電源」と位置づけてきた。そうした国のエネルギー政策の見直しも求められる。

 東京電力福島第1原発事故で明らかなように、いったん原発事故が起きれば、とりかえしのつかない甚大な被害を招く。国と電力会社は責任の重さを受け止め、原発事業の存続を判断しなければならない。

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