社説

  • 印刷

 「一つの中国」を掲げる習近平指導部への拒否感が明確に示された。

 台湾の総統選で、民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が再選を果たした。「台湾の主権と民主主義を守れ」と訴え、親中路線の国民党候補に過去最多得票数で圧勝した。

 政府への抗議デモが相次ぐ香港情勢が追い風になったことは間違いない。中でも、香港の民主派に共感する多くの若者たちが支持した。

 中国は台湾の民意を直視し、向き合い方を冷静に考えるべきだ。平和的な対話を呼びかける蔡政権に対して、武力で圧力をかけるようなことがあってはならない。

 振り返れば、蔡氏の支持率は低迷していた。2018年秋に行われた統一地方選挙で、民進党は中台関係改善を掲げる国民党に大敗し、総統選での苦戦が予想された。

 ところが、台湾を「不可分の領土」とみなす中国への警戒感が風向きを変えた。

 昨年1月、習近平国家主席は武力行使の可能性にも触れながら、「一国二制度」による台中統一を進める意欲を示した。香港で逃亡犯条例の改正案に端を発する抗議活動が本格化したのは、その5カ月後である。

 デモを力ずくで抑え込もうとする香港政府と、背後で強硬な対応をちらつかせる習指導部に、台湾の人々が「今日の香港は明日の台湾」と危機感を抱いたのは当然だ。

 中国の強権的な姿勢が招いた事態ともいえる。習指導部にとっては香港に続く誤算だっただろう。

 今後懸念されるのは、台湾を巡って米国と中国の対立が激しさを増すことである。

 総統選は米中の「代理戦争」とも評された。歴代の米政権は台湾に米中関係のトラブルメーカーにならないようくぎを刺してきたが、トランプ政権は蔡政権に肩入れしている。経済、軍事両面で拡大する中国を抑止する最前線として位置付けているためだ。

 昨年、トランプ氏は27年ぶりに台湾への戦闘機売却を決めた。その後、中国は台湾海峡に空母を通過させて軍事的圧力をかけた。

 大統領選を今秋に控え、中国が台湾に対して強硬手段に出れば、米国が鋭く反応する可能性も否定できない。注視する必要がある。

 基本的人権や自由、民主主義などの普遍的価値観を受け入れようとしない中国とどう向き合うか。台湾や香港のみならず、多くの国が直面している問題だ。

 日中関係の改善を急ぐ安倍政権は、習氏の国賓としての来日を春に控える。隣国として、人権尊重などを粘り強く求めていく姿勢をはっきり打ち出さねばならない。

社説の最新
もっと見る

天気(5月31日)

  • 22℃
  • ---℃
  • 70%

  • 22℃
  • ---℃
  • 60%

  • 23℃
  • ---℃
  • 60%

  • 23℃
  • ---℃
  • 70%

お知らせ