社説

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 4年の任期の最終年に入ったトランプ米大統領が一般教書演説に臨み、向こう1年の内政・外交の施政方針を示した。

 「偉大な米国の復活」をテーマにこれまでの成果をひたすら列挙した。雇用増加や失業率低下など好調な経済実績を誇示し、日本との貿易協定や対中貿易協議の「第1段階」合意などもアピールした。「米国は繁栄し、再び尊敬されている」と強調し、国内で「労働者層の好景気」が起きていると主張した。イラン革命防衛隊の有力司令官殺害を自ら命じたことにも胸を張った。

 11月の大統領選を見据えているとはいえ、あまりの自画自賛ぶりに違和感を覚えざるを得ない。

 見過ごせないのは、自らが少しでも不利になる事柄に触れなかった点だ。上院で弾劾裁判の渦中にあるウクライナ疑惑には一切言及しなかった。無罪評決が出るのが確実な情勢だが、自身に降りかかった疑惑に反論さえしないのは不自然ではないか。非核化交渉が停滞する北朝鮮問題についても一言も発しなかった。

 自由と民主主義を尊重し、国際社会をけん引すべき超大国のリーダーとして、課題に背を向ける姿勢は大いに疑問である。

 「米国第一主義」にもさらに拍車がかかった印象だ。アフガニスタンに駐留を続ける米軍の撤退に取り組んでいることを強調した際、「米国は他国の警察機関ではない」と言い放った。人権無視との批判が根強い不法移民対策では、メキシコ国境の「壁」について来年初めまでに約800キロ以上を完成させると表明し、執着ぶりを改めて示した。

 注目の大統領選は、候補者選びの第一歩となるアイオア州の党員集会で幕を開けた。与党共和党はトランプ氏が圧勝し、指名が確実な情勢だが、野党民主党は混戦が続きそうな様子だ。

 トランプ氏はこの3年間、国民の分断を深め、党派対立を激化させるとともに国際社会を翻弄(ほんろう)してきた。国際協調や人権、報道の自由などを軽視し、民主主義を危機に陥れたとの指摘もある。

 演説では、民主党左派が提案する公的な国民皆保険制度に対して「社会主義に米国の医療保険制度を破壊させない」と対決姿勢を鮮明にした。民主党のペロシ下院議長は演説直後にトランプ氏の原稿コピーを破り捨てて抗議の意を示し、民主党の一部議員は途中退席した。与野党の対立は先鋭化する一方だ。

 トランプ氏の登場は米国社会や国際秩序を変質させた。今年の大統領選は国際社会に大きな影響を与える。長丁場の選挙戦で米国民がどのような選択をするか注視したい。

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