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 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスの集団感染で、乗客の80代の日本人男女2人が亡くなった。乗船者の死亡は初となる。

 男性は今月10日に発熱し、翌日に船から病院に搬送された。気管支ぜんそくなどの持病があったという。

 女性は5日から発熱が続き体調不良を訴えていたが、医療機関に搬送されたのは1週間後だった。

 船内待機という異例の状況で適切な医療が受けられたのか、疑問が残る対応だ。専門家は持病や高齢が症状の悪化を招いたとの見方を示している。発症からの経過や治療内容の徹底的な検証が求められる。

 約3700人が乗ったクルーズ船は今月3日に横浜に到着した。10人の感染を確認した2日後、政府は検疫を進めるため、乗船者に2週間の船内待機を要請した。観察期間が過ぎた19日以降、検査で陰性が確認された乗客の下船が続いている。

 船内で感染した重症者は、今なお約30人を数える。治療に全力を注ぐとともに、下船後の乗客らの心身のケアも欠かせない。

 問題は、船内待機の間に感染者が600人超にまで膨らんだことだ。乗船者の2割近い高率である。国立感染症研究所は、多くは待機前に感染していたが、その後も船内の感染は続いたとする分析結果を発表した。政府は、乗客乗員の行動や感染ルートなど船内の実態を解明し、国民に説明する責任がある。

 政府の対応は二転三転した。当初は無症状の人は下船させる予定だった。だが、感染者が2桁に上ると分かると船内待機に方針を転換した。待機中に持病を悪化させるケースが出始めたため、14日からは一部の高齢者の下船も認めた。

 重症化リスクや状況変化への見通しが甘く、後手に回ったと言わざるを得ない。早い段階から関係国に協力を求め、柔軟に下船の判断をしていれば結果は違ったのではないか。海外メディアから批判が相次ぎ、国内の専門家から「失敗例」などと厳しい指摘があるのは当然と言える。

 国内には大規模な検査を迅速に実施できる態勢は整っておらず、下船後の乗客を一時収容できる滞在施設もない。大型客船に対応できなかった集団感染対策の不備が、国際社会に不安感を与えた代償は大きい。

 大型客船の航海中に集団感染が発生した場合、どこの国が法的責任を負うか国際ルールが確立していない問題も浮き彫りになった。別の船では日本やフィリピンなどで入港を拒否され、入港先がなかなか決まらない事態も起きた。検証結果を世界保健機関(WHO)などと共有し、有効な対策づくりにつなげるべきだ。

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