社説

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 テレビ番組が放送開始と同時にスマートフォンやタブレットなどで視聴できるインターネットの番組同時配信を、NHKが3月から始める。試験実施をへて4月から本格的に運用する計画だ。

 放送後の番組配信や、過去の番組を提供する「オンデマンド」サービスは、NHKや民放が既に手掛けている。若者のテレビ離れが進む中、同時配信にはネット時代の視聴者獲得戦略として期待がかかる。

 とはいえ、NHKは7千億円超の予算規模と技術力を誇る巨大メディアだ。民放を圧迫する「独り勝ち」は避けるべきである。

 計画の認可に当たり、総務省は同時配信に投入する費用の抑制や、民放などと協議する場の設置を条件とした。放送全体の未来像を切り開く責任を自覚してもらいたい。

 放送とネットなどの通信を融合した同時配信は海外で普及しており、実施はNHKの悲願だった。総務省も東京五輪・パラリンピックに向けて進める方針を打ち出していた。

 放送法では災害報道や一部スポーツ中継を除き、NHKによる同時配信は制限されていた。そのため昨年の通常国会で法が改正された。

 3月からの配信は1日17時間程度に限定し、4月から1時間拡大する。総合テレビとEテレの番組が対象で、受信契約者や家族などは専用アプリで申し込みができる。五輪期間中は開会式や主な種目の中継を配信し、契約者以外も視聴できる。

 民放キー局もこれに追随し、五輪中継での同時配信を目指す。秋以降、動きが加速する可能性がある。

 ただ同時配信はコストが高く、とりわけ民放経営の負担となりかねない。東京のキー局が人気ドラマなどを配信すれば、同じ番組を流す地方局の視聴者離れを招く懸念もあり、全面的な実施には課題が残る。

 NHKと民放各局が補い合って国民の「知る権利」に応えるのが本来の姿だ。NHKは技術の提供などで共存の道を探る必要がある。

 受信料見直しが法改正の条件とされたことも忘れてはならない。これを受けてNHKは昨年10月の消費税増税時に料金を据え置き、今年10月には2・5%引き下げる。

 2020年度は2年連続の赤字予算を組んでいるが、それまでは過去最高の増収を続けていた。さらなる負担軽減の検討は当然といえる。

 NHKは高市早苗総務相から経営改革も求められている。経営のスリム化や透明化を図ると同時に、権力を監視する報道機関として政権と距離を置く姿勢も明確にすべきだ。政治からの独立性を示すことが、不祥事などで揺らいだ「公共放送」の信頼回復には欠かせない。

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