社説

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 夫妻そろっていつまで説明責任から逃げるつもりなのだろう。

 自民党の河井案里参院議員の公設秘書と、夫の河井克行前法相の政策秘書が公選法違反(買収)の罪で広島地検に起訴された。案里氏が初当選した昨年7月の参院選で、車上運動員に法定の上限を超える報酬を支払ったとされる。

 地検は、このうち案里氏の公設秘書が連座制の対象になるとみて、迅速な「百日裁判」を広島地裁に申し立てた。禁錮以上の刑が確定し、連座制が適用されれば案里氏の当選は無効となり、失職する。

 買収は金品で投票行動を左右しようとする悪質な選挙違反である。疑惑の事実関係と自身の責任について有権者に説明するのは政治家として当然のけじめである。

 だが、夫妻の対応からは説明責任を果たす意思が全く感じられない。克行氏は昨秋の疑惑発覚直後、突然法相を辞任した。その後は2人とも「捜査に支障が出る」として説明を拒み、臨時国会を欠席し続けた。

 今年に入り国会に姿を見せたものの、事件には口を閉ざしたままだ。それぞれの事務所が家宅捜索され、秘書らが起訴されても、人ごとのようなコメントを出すだけだった。

 案里氏は党幹部に議員を続ける意向を伝え、「秘書の業務を知る由もない」と自身の関与を否定したという。百日裁判となった最近の公選法違反事件では、陣営幹部ら関係者の起訴か有罪が確定した段階で、失職を待たずに議員辞職に追い込まれるケースがほとんどだ。秘書に責任を押しつけて済む問題ではない。

 克行氏も同じだ。逃げ回っていては国会議員の職責を果たせない。公の場で説明できないなら、2人とも速やかに議員辞職すべきだ。

 案里氏陣営では、本来ボランティアで行う選挙運動に報酬を支払っていた別の疑惑もある。克行氏は妻の選挙運動を実質仕切り、複数の地元首長や県議らに現金を渡した疑いもある。地検は、夫妻が幅広く金を配り、票の取りまとめを依頼したとみて関係者に事情を聴いている。事件の全容を解明する必要がある。

 安倍晋三首相や自民党執行部の対応は、甘いと言わざるを得ない。

 党本部は参院選公示前、案里氏側に1億5千万円という破格の資金を提供した。選挙戦では安倍首相自ら党総裁として新人の案里氏の応援に駆けつけ、参院選後には克行氏を法相として初入閣させた。過剰に肩入れした責任は免れない。

 夫妻は今も自民党所属議員である。首相や党執行部は2人に説明責任を果たすよう強く指導し、それができないなら自ら進退を決するよう促すべきだ。

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