社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済の失速は、深刻さを増している。

 国際通貨基金(IMF)は、2020年の世界全体の成長率がマイナス3・0%と08年秋のリーマン・ショックの影響を受けた09年の落ち込み幅を大きく上回る予測を示した。世界全体が深刻な不況に陥った1929年の大恐慌以来、最悪の景気後退になる可能性が高いという。

 大恐慌による混乱は、ブロック経済の台頭などで国際社会の緊張を高め、第2次世界大戦の一因になった。その教訓に学び、各国は対立を回避し、連携による感染拡大阻止に全力を挙げねばならない。

 IMFの予測では、日米欧の成長率がマイナス5~7%台と大きく落ち込む。公式発表の感染者数が減り続ける中国は1%台と小幅成長の見込みだが、無症状感染者が多数存在する可能性があり、海外からの帰国者による第2波の感染拡大も懸念される。楽観は禁物だ。

 新興国や発展途上国では海外投資家らによる資金引き揚げも始まっている。投融資の受け入れに依存する国が多く、財政が急速に悪化して医療や感染拡大阻止に手が回らなくなる事態が起こりうる。

 日米欧の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は、通貨安や資金流出に苦しむ途上国の債務返済を猶予することで大筋合意した。世界経済の回復を目指すには、途上国でも感染拡大を抑え込むのが必須条件である。先進国はその点を十分に認識して、医療面で途上国を支援してもらいたい。

 米国では3月の失業率が4・4%と大幅に悪化した。4月は2桁に達するとの予測がある。日本でも一時帰休や鉄鋼メーカーの高炉休止などの動きが現れている、ウイルス禍による経済不振はこれから本格化するとみていい。

 避けねばならないのは、経済回復を焦るあまり、感染症対策が後退することだ。

 トランプ米大統領は、米国内での感染拡大が峠を越えたとして一部の州で経済活動を段階的に再開するなどの制限緩和策を示した。しかし死者数はまだ増え続けており、州知事の間には慎重論が根強い。

 緊急事態宣言に伴う日本の営業自粛要請の解除も、いずれ政府や自治体が難しい決断を迫られる。

 ウイルス禍が長期化すれば、経済損失も膨らむ。出口戦略の時期やあり方は、専門家の意見を十分に尊重して判断する必要がある。

 人々の命が脅やかされず、ヒトやモノが制限なく動ける。経済活動の大前提となる安全な環境を世界全体で整えるのが、今は最優先だ。

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