社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大の中で、コンサートを聞くことも、絵画展を見ることもできない日々が続いている。無味乾燥な生活になりがちな今、芸術的なものの価値を再確認した人も多いことだろう。

 だが芸術や文化は、かつてないほどの危機に直面している。

 感染防止のため、兵庫県などの自治体は劇場、映画館、演芸場、ライブハウス、美術館などの芸術・文化施設への休業要請を行っている。

 演奏会や演劇、展覧会などの行事は、緊急事態宣言が出る前から自粛による中止や延期が相次いでいた。現在は国内の文化活動がほぼ停止した状態にある。

 その結果、仕事がなくなり、収入が途絶えた音楽、映画、劇団などの関係者から悲鳴が上がっている。

 政府は、1人10万円の給付や中小企業・個人事業主向けの「持続化給付金」の支給を決めた。雇用調整助成金の拡充なども行っている。

 しかし感染の終息期が見えず、活動再開のめどが立たない中、施設の維持費や人件費に充てるには、これらの対策だけでは十分といえない。文化の灯(ひ)を守るために、さらに踏み込んだ公的支援が求められる。

 注目したいのは諸外国の政策だ。ドイツ政府は、文化産業に携わるフリーランスや小規模事業者に対する約50億ユーロ(約5800億円)の財政支援に取り組む。担当大臣は「文化、創造、メディアのかけがえのなさを重視している表れだ」と述べた。英国では、公的支援団体のアーツカウンシルが芸術家や劇場への資金注入を進める。日本政府もこうした事例を参考にすべきだ。

 アーティストの側も、活動継続に向けた模索をしている。インターネットで寄付を募るクラウドファンディングの活用などが、各地で起きている。有料動画の配信やグッズ販売も始まっている。文化の衰退を防ぐには市民の協力も欠かせない。

 文化施設が休業要請を受けたのは「社会生活を維持する上で必要な施設」とみなされなかったからだろう。しかし、私たちは日々単に生きているだけではない。よりよく生きるには文化の存在は必要不可欠だ。

 コロナ禍での文化支援について、豊岡市在住の劇作家・平田オリザさんは「『芸術家に支援をしてくれ』と国家にお願いしているわけではない。支援されるべきは、文化を享受する権利を奪われた国民、特に子どもたちだ」と述べている。傾聴すべき指摘である。

 感染が終息しても、残るのが文化不毛の国では困る。文化への支援は、決して担い手のためだけでないことを確認しておきたい。

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