社説

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 政府は、国内旅行料金の半額相当を補助する事業を22日から始める。新型コロナウイルスの影響で需要が低迷する業界を支援する「Go To キャンペーン」の一環だが、時宜にかなっているとは言い難い。

 5月末の緊急事態宣言解除から新規感染者数は全国で増えている。7月に入り連日のように100人を超す東京都は、警戒レベルを最高水準に引き上げた。感染拡大の第2波は着実に迫りつつある。

 このタイミングで都道府県間の往来を政府が率先して奨励すれば、感染増に拍車を掛ける可能性が否めない。全国一律でいいのか、実施時期や事業内容を再検討するべきだ。

 今回の事業は当初、8月上旬に始める予定だったが、政府は22日に繰り上げた。関連業界などの要望という。8月1日にはイベントの観客数制限が撤廃される見込みの上、7月下旬には東京五輪開催を想定していた4連休が控える。需要刺激に期待が高まっているのは確かだ。

 だが人の動きが活発になれば、ウイルスの拡散も勢いを増す。政府は事業実施の可否について、改めて専門家の判断を仰ぐ必要がある。

 地方の観光関連業者や自治体は、都市部から多くの人が訪れることで感染者が増えるのではと不安を募らせている。一時的に需要が増えるより、休業などに追い込まれる事態を避けたいのは当然だ。

 政府は、感染防止対策が不十分な宿泊施設は支援対象から外すとしている。だが実態をすべて確認できるわけではない。そもそも、豪雨で九州を中心に多くの被災者が先の見えない日々を送る中、旅行を楽しむよう呼びかける姿勢には、多くの国民が首をかしげるのではないか。

 全国知事会は、近隣地域に限定した旅行促進から始めるべきだとの緊急提言をまとめた。観光は多くの地域で雇用や税収を支えているだけに、安全性を見極めながら慎重に回復を図ることが不可欠になる。

 「Go To キャンペーン」は旅行に加え、飲食店やイベント、商店街の利用に対する補助策も盛り込んでいる。4月末に成立した2020年度第1次補正予算には約1・7兆円が計上された。

 収束が見えない状況で巨額を投じても、どれだけの効果を上げるかは見通せない。苦境に立つ事業者を直接支援する手法も検討するべきではないか。

 コロナ禍は峠を越したと都合よく判断した為政者が、経済活性化に前のめりになり状況を悪化させる。そうした一部の国の存在が、世界的な感染拡大を抑え込めない要因となっている。日本は、決して同じ轍(てつ)を歩んではならない。

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