社説

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 都道府県ごとに毎年定める最低賃金の2020年度の目安について、国の中央最低賃金審議会は「現行水準維持が適当」と答申した。

 事実上の据え置きである。具体的な額を示さなかったのは、リーマン・ショック翌年の09年以来11年ぶりだ。賃上げの流れが続いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で急ブレーキがかかった。

 確かに、コロナの影響は深刻だ。関連する解雇や雇い止めは3万9千人を超えた。先行きが見通せない中、雇用を守り、事業継続を優先させるという判断には、やむを得ない面もあるだろう。

 しかし、継続的な底上げの重要性はコロナ禍でも何ら変わらない。政府は賃上げしやすい環境の整備に一層努めねばならない。

 審議会では労使の主張が真っ向から対立した。労働者側は「最低賃金を増額しないのは社会不安を増大させ、格差を是認するのと同じ」と訴えた。一方、経営側は「世界中が非常事態にある」と引き上げの凍結を主張した。答申には経営側の主張が大きく反映された。

 日本の最低賃金は世界的に見ても低いままである。しかも労働者の約4割を非正規雇用が占め、最低賃金に近い水準で働く人は多い。

 現在の全国平均時給は901円で、週40時間フルタイムで働いても年収は190万円に満たない。ワーキングプア(働く貧困層)とされる200万円を下回り、暮らしの安心にはほど遠い。

 都道府県間の格差も依然大きい。兵庫は899円と平均より低く、近隣の大阪は964円だ。東京の1013円に対し、東北や四国などの最も低い県は790円で200円超の開きがある。これでは若者を中心に、働き手の都市部への集中がさらに加速してしまう。

 実際の最低賃金は今後、各都道府県の地方審議会が国の目安を基に話し合う。格差是正の観点からも、地域経済や雇用の実態を見極めつつ、引き上げの方向で議論が進むことを期待したい。

 コロナの感染拡大により、社会を支える「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちの厳しい状況が改めて浮き彫りになった。賃金の底上げは、介護、医療、保育、小売りなどの分野で働く人の処遇改善につながるはずだ。

 安倍政権は「成長と分配の好循環」を掲げて最低賃金の大幅引き上げを推進してきた。だが、その姿勢が大きく後退した。

 中小企業の生産性を高める支援策が求められる。同時に、政府は最低賃金引き上げによる経営への影響を和らげる政策を講じる必要がある。

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