社説

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 青森県六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場が、新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査に合格した。安全対策が適合したと認められ、工場は本格稼働に向けて一歩踏み出したことになる。

 再処理工場は国の「核燃料サイクル政策」の中核施設で、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す。1993年に着工、97年の完成予定だったが、トラブルなどで24回延期された。今後も工事計画の審査などがあり、予定する2021年度の完成は困難とみられる。

 今年5月、規制委が審査書案を取りまとめたところ、一般から延べ765件の意見が寄せられた。原燃の能力を疑問視する声が多かったという。不安を残したまま工場を稼働させることは到底容認できない。

 建設費は当初の7600億円から2兆9千億円に膨らんだ。稼働や廃止の費用までを含めた総事業費は13兆9400億円にも上る。このまま事業を進めれば、さらに重い負担を国民に強いることになる。

 取り出したプルトニウムとウランは混合酸化物(MOX)燃料にして高速増殖炉で使う予定だったが、その原型炉もんじゅ(福井県)の研究は頓挫して廃炉になった。苦肉の策として、一般の原発でMOX燃料を使用するプルサーマル発電が行われているものの、これも計画通りに進んでいない。燃料の全てにMOX燃料を使う世界初の商業炉、大間原発(青森県)の建設も遅れている。

 核燃料サイクルが事実上破綻していることは明らかである。

 プルトニウムは1941年に人工的に作られた放射性元素で、毒性の高さと寿命の長さで知られる。プルサーマルは、灯油ストーブでガソリンを燃やそうとする行為に似ていると指摘する研究者もいる。

 長崎原爆に使われたプルトニウムは核兵器に転用することが可能である。その大量保有については、国際社会から厳しい目で見られることも忘れてはならない。

 工場の稼働で、もう一つ懸念されるのはトリチウムなど放射性物質の大量放出だ。フル稼働時の年間放出量は一般の原発の約180倍だという。東京電力福島第1原発の処理水問題でも、地元がトリチウムの放出に反発している。六ケ所村ではそれとは比べものにならないほどの量が海や空に流される。漁業者から心配の声が出ているのは当然だろう。

 現実に合わない政策からは一刻も早く撤退しなければならない。政府は使用済み核燃料の再利用を無理に進めるより、各地の原発で貯蔵されている「核のごみ」の処分問題に本腰を入れ、もうこれ以上ごみを出さない「脱原発」を進めるべきだ。

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