社説

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 安倍晋三首相は、第2次政権発足からの連続在職日数がきのうで2799日となり、佐藤栄作を抜いて歴代最長となった。

 だが政権は、この7年8カ月で最も厳しい状況にある。

 共同通信社の世論調査によると、内閣支持率は8月も36・0%と低迷が続く。コロナ対応の混乱に対する不満や、アベノミクスの成果とアピールしてきた経済指標が軒並み悪化した影響が大きいとみられる。

 最近は、コロナ対策の重要局面でも首相が国民に直接メッセージを発する場面は見られず、野党が求める臨時国会の召集にも応じない。

 こうした「逃げ」の姿勢が、取りざたされる首相の健康不安説を払拭(ふっしょく)できない要因にもなっている。国民の信頼を取り戻し、コロナ禍を乗り切るためにも、国会を開いて政権運営の方針を明らかにするべきだ。

 2012年12月に民主党から政権を奪い返して以来、首相は圧倒的な与党多数を背景に「安倍1強」体制を固めてきた。

 毎年のように首相が代わった以前と比べ、政権の安定をプラスと評価する見方は国内外にある。

 ただ、長さに見合った政治的遺産(レガシー)があるかというと首をかしげざるを得ない。むしろ弊害の方が目に付く。

 最大の問題は、異論に耳を傾けない政治手法である。2度にわたる「消費増税延期」などを掲げた選挙で得た数の力を使い、賛否が分かれる政策を強引に進めてきた。

 歴代政権が認めてこなかった集団的自衛権の行使を一部容認する安全保障法制の制定はその典型だろう。

 一方で、政策の看板は「地方創生」「1億総活躍」「全世代型社会保障改革」と目まぐるしく替わった。その検証は十分行われず、一極集中や格差は是正されないままだ。

 森友・加計学園問題や財務省の公文書改ざん、「桜を見る会」など首相自身に関する疑惑の数々は、官邸への忖度(そんたく)と隠蔽(いんぺい)体質という1強政治の悪弊を浮かび上がらせた。

 首相が得意とする外交分野でも成果は乏しく、首相の宿願とされる憲法改正は見通しが立たない。

 これらの問題点がコロナ対応にも表れているのではないか。国民のニーズと地方の実情を顧みない布マスク配布や「Go To」事業、専門家会議などの議事録を残さず責任の所在が曖昧な政策決定などだ。

 このままでは、緊張感を失った長期政権のマイナス面が国民生活にも影響を及ぼしかねない。首相は自らのレガシーづくりに気を奪われず、新型コロナとの闘いにこそ力を注ぐべきだ。国民の命と暮らしを守る責務を果たしてもらいたい。

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