社説

  • 印刷

 電子決済サービスを悪用し、銀行の預貯金が不正に引き出される被害が相次いで発覚している。

 10以上の銀行でNTTドコモの「ドコモ口座」への流出が確認されたのに続き、ゆうちょ銀行ではドコモ口座のほかソフトバンク系の「ペイペイ」など計7社のサービスから引き出されていたことが分かった。

 利用者が被害に遭ったことに気づきにくいのが特徴で、被害額などはさらに広がる可能性がある。

 キャッシュレス決済は政府の後押しもあり、多くの企業が参入して競争も激化している。安心して利用できるよう、今以上の安全対策の義務付けなどを検討するべきだ。

 共通するのは、何者かが他人になりすましてスマートフォン決済などのサービスにアクセスし、不正に入手した銀行の口座番号や暗証番号などとひも付けて預金を移す手口だ。高額品の購入に使われたり、他の口座に送金されたりしたとみられる。

 これまでに約2千万円を超す不正が発覚したドコモ口座の場合、安全対策にいくつも穴があった。利用者を増やすため、ドコモの携帯電話を使っていなくても匿名のメールアドレスだけでドコモ口座が作れた。銀行口座とのひも付けも口座番号などの入力で済み、なりすましを防ぐ2段階認証を導入していなかった。

 被害があった銀行側も2段階認証を怠るなど対応に甘さがあった。全国銀行協会の三宅兼承会長は不備を認め陳謝している。

 昨年にはコンビニ大手のセブン-イレブンが導入したスマホ決済サービスでも、個人認証の甘さから不正利用が起き、サービス廃止に追い込まれた。資金決済には二重三重の安全策が要るとの意識が企業側に欠けているのではないか。

 NTTドコモは被害者への全額賠償を打ち出し、顔写真認証を取り入れるなどの対策を発表した。

 各金融機関や決済サービス事業者は被害状況の確認とともに、セキュリティー対策の総点検と強化を急がねばならない。警察は捜査を徹底し、口座番号などが流出した経緯を究明する必要がある。

 利用者側も、残高確認や通帳記帳をこまめに行うなど、自分の預金を守る意識を高めたい。

 政府はキャッシュレス決済利用者に公費でポイントを割り増すなど、普及に力を入れてきた。現在も、マイナンバーカード普及を兼ねたマイナポイントのPRに余念がない。

 便利さをアピールする前に、システムの弱点を突こうとする犯罪を防ぐ対策を講じねばならない。菅政権はデジタル化を旗印に掲げるが、普及ありきで政策を推し進めれば、不正再発は避けられないだろう。

社説の最新
もっと見る

天気(10月26日)

  • 20℃
  • 11℃
  • 0%

  • 21℃
  • 8℃
  • 10%

  • 21℃
  • 11℃
  • 0%

  • 22℃
  • 10℃
  • 10%

お知らせ