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 新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、菅義偉首相は就任会見で来年前半までに国民全員分の確保を目指すと述べた。前政権の方針を引き継ぐ内容だ。

 ワクチン開発は米中などが熾烈(しれつ)な競争を繰り広げている。自国民の感染リスクを減らせるだけでなく、早く完成すれば世界各国に広めて政治的な影響力を強められるからだ。

 ただ、このウイルスには未解明の部分も多く、ワクチン開発も試行錯誤は必至だ。政府は安全性を最優先して準備を進めねばならない。

 世界保健機関(WHO)によると、現在30種以上のワクチンで臨床試験が実施され、米ファイザーや中国シノバック、英アストラゼネカなど約10種が最終段階に進んでいる。

 一般的なワクチン開発は通常5~10年を要するが、今回はスピードが重視されるため、先行社の多くでウイルスの遺伝情報を使うなどの新技術を導入している。だが、これらは実用例が乏しいだけに、専門家の中には副作用を不安視する声もある。

 スピード重視が開発に影響を及ぼしている点も懸念材料だ。臨床試験が終わらないうちに中国は例外的に緊急投与を始め、ロシアも使用を承認した。トランプ米大統領は、11月の大統領選までに完成させるよう圧力をかける言動を続けている。

 ワクチンを開発する欧米の9社は共同で安全最優先の開発を進めると宣言した。当然ともいえる内容をわざわざ宣言したのは、政治的な思惑による言動が高まっていることへの危機感の表れだろう。

 日本でもワクチン開発は進んでいるが、政府は先行しているファイザーやアストラゼネカと、ワクチンの供与で基本合意に達した。

 しかし、アストラゼネカは先ごろ、被験者に副作用が疑われる深刻な症状が発生したため、臨床試験を一時中断した。その後再開したが、判断の根拠などは明らかにしていない。安全性を検証できるよう情報を公開するべきだ。

 日本には、外国産ワクチンで同等の承認制度がある国で製造販売が認められた製品について審査手続きを簡略化できる「特例承認」の制度がある。政府は新型コロナワクチンもこの制度で早期に導入する可能性も想定しているようだ。

 だが、各国とも開発競争に前のめりになっている状況を踏まえれば、専門家に知見を仰ぎ慎重に判断しなければならない。

 世界的な流行を食い止めるには、途上国にもワクチンが公平に行き渡る国際的な枠組みを強化する必要がある。「自国第一主義」では人類はウイルスを克服できない。日本は率先して協力を進めていくべきだ。

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