社説

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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」について、北海道寿都(すっつ)町が応募を検討していることが明らかになった。続いて、同じ道内の神恵内(かもえない)村商工会が、応募検討を求める請願を村議会に提出した。

 文献調査は処分場選定に向けた第1段階で、2007年に高知県東洋町が応募し、住民の反発で撤回したという経緯がある。寿都町が開いた住民説明会では反対意見が相次いでいる。両町村はまず、住民の声を広く丁寧に聞いてもらいたい。

 核のごみは、原発の使用済み核燃料を再処理した後に残る廃液で、ガラスで固め、地下300メートルより深い岩盤に埋める地層処分をする。

 火山や活断層を調べる文献調査を受け入れれば最大20億円の交付金が出る。寿都町は人口減少や財政課題解決のために応募を検討しているという。同町の人口は2900人を切り高齢化率は40%を超える。自治体としての危機感は理解できる。

 だが文献調査に約2年、ボーリングなどの概要調査に約4年、地下深くの精密調査には約14年がかかる。処分場立地が決まっても操業はその約10年後だ。これだけでも子や孫の世代の暮らしに関わるが、核のごみは数万年後まで閉じ込めておく。気の遠くなるような将来にまで責任を持たなければならない。

 北海道には、核のごみの持ち込みは受け入れ難いと宣言する条例があり、鈴木直道知事も慎重な姿勢を示す。地元の漁業団体も反対を表明している。寿都町は近隣の自治体や住民、関係団体の意見も踏まえ、時間をかけて議論を尽くすべきだ。

 国内には1万8千トン以上の使用済み核燃料があり、各地の原発や青森県六ケ所村の再処理工場で保管されている。原発を運転する限り増え続けるが、再処理工場は完成予定から20年以上が過ぎてもまだ動いていない。燃料を再処理して原発で再利用する「核燃料サイクル政策」は事実上破綻している。

 必要なのは、再処理を前提とした最終処分の再検討である。経済産業省は「あくまでも選択肢を確保するため」として、使用済み燃料をそのまま地中に埋める「直接処分」の研究を行っている。これに予算を投じ、充実させるべきとの専門家の意見もある。コストは再処理の半分ほどになるとされる。

 処分場選定の前に、使用済み燃料をこれ以上出さないよう、エネルギー政策を「脱原発」に転換するのが先決だ。交付金などで立地を誘導するような方法も見直すべきである。政府には、最終処分について責任を持って国民に説明し、不安や疑問に答えていく姿勢が求められる。

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