社説

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 どのような国を目指すのか、依然として国家観が伝わってこない菅義偉政権は、教育政策についても明確なビジョンを示していない。

 ただ、「安倍路線」を継承する姿勢ははっきりしている。文部科学相に萩生田光一氏を再任した。有識者や経済人らで構成する政府の教育再生実行会議の存続も決めた。

 文科相は会見で、小中学校の少人数学級や教育のデジタル化を教育再生実行会議で話し合うと述べた。いずれも重要なテーマであり、コロナ禍で必要性が再認識された。議論を深める意義はあるだろう。

 しかし、教育政策やその決定過程において安倍路線は多くの課題を残した。官邸主導で急いだ大学入試改革の失敗が象徴的だ。

 丸ごと継承するのではなく、丁寧な検証が欠かせない。何より「負の遺産」は見直す必要がある。

 教育再生を最重要課題の一つに掲げた安倍政権は、大きな制度変更を次々と実行した。それらの多くには共通点がある。個人よりも公共や国を重視し、統制を強めようとする姿勢が見えることだ。

 第1次政権で1947年の制定以来初となる教育基本法の改正を断行した。愛国心教育を盛り込み、学校現場からも異論が続出した。第2次政権では小中学校の道徳を教科に格上げした。自治体の首長から独立していた教育委員会制度を転換し、首長の権限強化に道を開いた。

 経済界の意向を背景にグローバル競争を強く意識しているのも特徴だ。2021年に初めて行われる大学入学共通テストで民間英語検定試験の導入を決めたのもその一環だが、制度設計がずさんで見送られた。国立大学で進める改革は文科系の分野の軽視とする批判が絶えない。

 推進力となったのが、首相の私的諮問機関として設けられた教育再生実行会議である。政権の意に沿う提言をまとめ、文科相の諮問機関である中央教育審議会が施策化する流れができた。中教審が「下請け」になったように映り、教育現場の声が施策に生かされているか疑問が残る。

 政治主導が行き過ぎれば、教育の政治的中立性や専門性を損なう恐れがある。その点を新政権は肝に銘じねばならない。

 安倍前首相は辞任会見で幼児教育・保育と高等教育の無償化を成果に挙げた。高等教育の無償化は低所得層を対象としており、格差是正の観点からは評価できる。一方、中間層が対象外となるなどの点は再検討が求められる。

 疲弊する教員の負担軽減は最重要課題の一つといえる。次代を担う子どもたちを育むため現場が何を求めているか、耳を傾けるべきだ。

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