社説

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 NHKが2021年から3年間の次期経営計画案を発表した。構造改革などによる約630億円の支出削減方針を盛り込んだ。

 この額は総合テレビの年間支出に匹敵する。事業肥大化による「民業圧迫」が批判されていただけに、拡大路線からの転換を明確に掲げた点は前向きに受け止めたい。

 しかし、AMラジオや衛星放送のチャンネル削減を打ち出すなど、唐突な印象も拭えない。特にAMの第1、第2放送の一本化には違和感を覚える人が多いのではないか。

 AMの各放送は語学、学習番組の提供や災害時の情報発信などで重要な役割を担っている。BS1とBSプレミアムの一本化案が浮上した衛星放送も、ドキュメンタリーなどの良質な番組で評価を得ている。

 前田晃伸(てるのぶ)会長は記者会見で「番組の質は落とさないのが大前提」と述べた。視聴者や聴取者を置き去りにした見直しは避けるべきだ。

 NHKは約7200億円の年間予算規模を誇る、国内最大のメディアである。潤沢な資金を背景にした超高精細の4K・8K放送など、技術開発でも民放を圧倒する。

 一方で事業収入の97%を受信料が占めており、値下げなど視聴者の負担軽減が長年の課題とされてきた。昨年の消費税増税時に受信料を据え置き、10月には月数十円ほどの値下げを行うが、総務省などはなお一層の取り組みを求めている。

 経営計画案は、1月に就任した元大手銀行トップの前田会長が主導した。内容が重複する番組を整理する「ジャンル管理」の考え方を導入し、現状に大胆に切り込んだが、さらなる値下げには触れなかった。

 新型コロナ感染症の影響で新規契約が落ち込んでおり、財源を確保する狙いがあるとみられる。

 代わってNHKは地上波と衛星放送の契約料金一本化を含め、受信料のあり方を考えるとした。ネットによる視聴者への課金方法など、新たな検討課題もある。同時に、諸外国に比べ高水準とされる受信料の軽減策も大胆に進めるべきだ。

 前任の高市早苗総務相は、東京・渋谷区の放送センター建て替え工事費の見直しや営業経費の削減を求めていた。イベント節減など、切り詰めが可能なコストはあるだろう。

 一方でメディアとしての自主性は貫かねばならない。かんぽ生命保険の不正販売報道で、経営委員会が日本郵政グループの抗議を受け入れ、当時の上田良一会長を厳重注意するなど、政治や権力との関係に懸念を抱かせる問題が相次いだ。

 トップダウンの改革が報道や番組制作の現場に負の影響を与えないよう、経営陣は心すべきである。

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