社説

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 安倍前政権は2014年、看板政策として「地方創生」を打ち出した。東京に集中する人の流れや経済活動を地方に分散させ、少子高齢化と人口減少に歯止めをかけるのが狙いだった。

 「20年に東京圏の転入と転出を均衡にする」という目標を掲げたが、この6年間で首都圏への一極集中はむしろ加速した。

 目玉の政府機関の地方移転は中央省庁の猛反発に遭い、文化庁の京都移転を決めるのがやっとだった。企業の地方移転を優遇税制で促したものの、思うように進んでいない。

 地方の活性化と持続可能な地域社会づくりは、菅義偉首相の新政権でも最重要課題だ。菅氏自身も前政権から深く関わってきた。なぜ成果を上げられなかったのかを検証し、現場の声を生かして地方創生を仕切り直すのが菅政権の役割と言える。

 菅氏は、ことあるごとに「私自身が地方出身で、現場をよく知っている」と強調する。そんな菅首相に期待する地方関係者の声は多い。

 ただ、「まず自助」の社会像を掲げる菅氏だ。地方にも競争原理や前例主義の打破、規制改革を求める可能性は高い。地方の側も甘えは禁物だと覚悟しておく必要がある。

 菅氏が総務相時代、省庁の反対を押し切って創設したと誇る「ふるさと納税」は、出身地を応援するという制度の趣旨から離れ、自治体間の返礼品競争が過熱した。

 訪日外国人客の増加を軸にした観光振興も菅氏の肝いりとされるが、新型コロナウイルス感染の拡大で、訪日客に過度に依存する地域経済のリスクも明らかになった。

 限られた人や財源を地方同士で奪い合う構図が共通する。地方が知恵を競い、活性化を図る取り組みは大切だ。しかし、成果が上がらない自治体が切り捨てられるような制度では地方は疲弊するばかりである。

 前政権では、国のメニューに沿って認定された自治体に交付金などを配る手法が多用され、地方が振り回された面がある。

 自治体同士が連帯して相互利益を目指す取り組みが、これからの持続可能な社会には欠かせない。国の権限や財源を自治体に移譲し、真の自立を後押しする「地方分権」の視点も取り戻さねばならない。

 コロナ禍で、若い世代に地方移住への関心が高まっている。一時的なものに終わらせないため、働きがいのある仕事の創出やリモートワークの支援、安心して子育てできる環境整備など具体策を急ぐべきだ。

 少子化対策や地域の活性化は複数の省庁にわたる施策が多い。こうした分野でこそ、縦割り行政を打破する突破力を発揮してもらいたい。

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