社説

  • 印刷

 目の前の人道危機に対して、今こそ協力し合うときだ-。

 今年のノーベル平和賞の選考結果は、例年以上に国際社会の連携を強く訴えるメッセージといえる。

 受賞するのは、世界から飢えをなくすための食料支援に取り組む国連機関、世界食糧計画(WFP)である。1961年に設立された。新型コロナウイルスが世界的に大流行する中でも、紛争地域などで命をつなぐ活動を続けてきた。

 「飢えが戦争や紛争の武器として使われるのを防ぐ努力をしてきた」。ノーベル賞委員会は受賞理由をこう述べた。

 世界の飢餓をめぐっては2016年、支援関係者の間に衝撃が走った。それまで減少傾向にあった慢性的な栄養不足の人が、数十年ぶりに増加に転じたためだ。紛争の拡大や気候変動による干ばつが要因で、以降、悪化の一途をたどっている。

 WFPによると19年現在、55カ国・地域の約1億3500万人が飢餓状態にある。さらに今年は新型コロナによる景気後退などで、2億6500万人に上る恐れがあると警告している。

 世界は今、「自国第一主義」や内向き志向が強まっている。米トランプ政権が典型だ。しかし、飢餓は新たな紛争を生みかねない。

 人道的な側面に加え、安全保障の観点からも、多国間協調で対策に取り組む必要がある。WFPの報道官は「今すぐ行動しなければ手遅れになる」と語っている。後ろ向きの姿勢は許されない。

 新型コロナの感染拡大は、飢餓に苦しむ人々をさらなる苦境に追いやっている。食料支援だけでなく、ワクチンを途上国に行き届かせる仕組みが欠かせない。

 約60年に及ぶWFPの活動は、非常事態下で子どもたちがまっ先に健康被害を受けているという現実を浮き彫りにしている。

 これまでWFPは60カ国以上の学校に給食を提供してきた。北朝鮮でも20年以上支援をしている。新型コロナで世界各国に休校措置が広がると、給食に代わって持ち帰りの食料や食料引換券を配った。

 国連は、学校給食を栄養源として頼りにしている143カ国の子ども約3億6850万人の成長に重大な懸念を及ぼすと強調している。

 日本にとっても決して無関係ではない。格差が広がる中、貧困や孤立などから食事に事欠いたり、栄養不足の子どもたちがいることを忘れるべきではない。途上国支援に日本政府は積極的に貢献するべきだ。

 このたびの受賞を、国内外の課題解決につなげる契機としなければならない。

社説の最新
もっと見る

天気(12月5日)

  • 16℃
  • ---℃
  • 10%

  • 14℃
  • ---℃
  • 20%

  • 16℃
  • ---℃
  • 0%

  • 16℃
  • ---℃
  • 10%

お知らせ