社説

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 臨時国会で、焦点の一つとされる種苗法改正案の審議が始まった。

 国内で開発したブランド果実などの種や苗木が海外に流出する例が相次ぎ、対策を講じて国内農業を守ると農林水産省は狙いを説明する。

 ところが農家の中に、反発や疑念の声が聞かれる。政府は通常国会に改正案を提出していたが採決に至らず、継続審議となっていた。

 国民生活の根底を支える農業の振興は、与野党の枠を超えて取り組むべき課題だ。批判を直視して議論を深め、必要な点は修正するなど立法府の責務を果たしてほしい。

 改正案の柱は、農産物の開発者が栽培地域や輸出先を指定することができ、違反行為に罰則を科す点だ。

 一方、栽培した作物の種を採種して再び育てる自家増殖について、農水省に登録された品種は開発者の許可を義務付ける。

 懸念はこの点に集中している。種苗の購入や許諾料の支払いが必要になるとみられ、コストや手間が増える可能性があるためだ。

 農水省は、全品種に占める登録品種の割合がコメで16%などとし、大半の農家に影響しないと主張する。しかし北海道や青森県ではコメの作付面積の7割以上を登録品種が占めている。影響を過小評価したととられかねない。

 法改正の必要性を示す一例として農水省が挙げるのは、高級ブドウ「シャインマスカット」だ。国内で開発した苗が中国や韓国に流出して栽培され、国内産より安価な値段で近隣に輸出されている。

 だがこれには、海外での農産物の品種登録を開発者が怠ったのが原因との指摘もある。農水省は自家増殖を許可制にする理由を、増殖実態の把握や適切な流通管理のためとしているが、実効性は見通せない。

 開発者の権利を守ることに異存はない。それには海外での登録促進や不正栽培の監視などの対応を格段に強める方が効果的ではないか。

 農水省は2年前、食の根幹を支えるコメや麦、大豆などについて、種子生産と農家への普及を都道府県に義務付ける種子法を廃止した。民間の種子開発を促す狙いとされる。

 今回の種苗法改正と重ね合わせ、農水省は小規模農家や食の安定供給を軽視している、と農業者が不安に思うのもうなずける。

 種子法廃止を受け兵庫など20以上の道県は、公共の種子を守る条例を設けた。種苗法改正についても三重県議会や札幌市議会などが慎重審議を求める意見書を可決済みだ。

 農政の転換に、地方が次々と異議を申し立てている。そのことを政府は真剣に受け止め、農業者との対話を重ねる必要がある。

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