社説

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 法相の諮問機関である法制審議会が、罪を犯した18、19歳を現行よりも厳罰化する内容の少年法改正要綱を上川陽子法相に答申した。

 全ての事件を家裁に送致する仕組みは変わらないが、家裁から検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事裁判にかける事件は増える。

 少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるかどうかが議論の発端だが、諮問から3年たっても賛成、反対の意見が対立していた。答申はこの点に関し玉虫色の妥協案にとどめる一方、厳罰化の方向は明確にした。

 少年の更生支援を目的とする法の理念がこれで守られるのか、厳罰化ありきで法改正を進めることへの危惧を抱かざるを得ない。

 自民、公明両党は今年7月、適用年齢を引き下げずに一定の厳罰化を図る合意案をまとめた。民法上の成人年齢が18歳となる2022年4月に合わせた法改正を念頭に置いた動きだ。これを追認した答申は、政治主導の産物と言える。

 要綱は、18、19歳を「十分に成熟しておらず可塑性(柔軟性)を有する存在」と位置付け、刑事手続き上は18歳未満とも20歳以上とも別の取り扱いをすべきだと提言した。

 検察官が事件を家裁に送致する点はこれまでと変わらない。更生への道を探るため、調査や審判を受ける仕組みを残したのは納得できる。

 逆送される事件は殺人や傷害致死などに加え、強盗や強制性交など「刑の下限が1年以上の懲役・禁錮の罪」も対象になる。

 少年院でなく刑罰中心の刑務所に入る18、19歳が増えることには、家裁の現場から「今の方が更生につながりやすい」との声が上がる。「少年院で変われた」と言う元入所者もいる。更生を支える観点から、厳罰化には慎重な議論が必要だ。

 少年事件厳罰化の契機になったのは、1997年の神戸連続児童殺傷事件だ。今回の答申に、遺族は「厳罰化ではなく、もともと甘かった対応の『適正化』だ」と述べている。その心情は十分に理解できる。

 ただ、10歳以上の少年10万人当たりの刑法犯検挙人数は2003年の1265人から減り続け、18年には270人になった。少年犯罪の深刻化という「立法事実」は不十分ではないか。成人年齢の引き下げに少年法を合わせる必要があるのかという根本的な疑問も残る。

 将来罪を犯す恐れのある「虞犯(ぐはん)」の18、19歳が家裁送致の対象から外れ、専門家による立ち直り支援の機会を失うことも心配だ。起訴後の実名報道を認める点にも課題は多い。

 少年の更生を支え、健全な社会を実現する仕組みについて、国会などで丁寧に議論しなければならない。

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