社説

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 非人道的な政策による被害の救済を求める訴訟の判決が、またしても法の壁の厚さを際立たせた。

 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたとして大阪府の70~80代の高齢夫婦ら3人が国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁が原告の訴えを退けたのである。

 同様の訴訟は神戸地裁をはじめ全国9地裁・支部で起こされている。今回が3件目の判決で、昨年5月の仙台地裁、今年6月の東京地裁に続く原告側の敗訴となった。

 いずれも賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」を過ぎたとの理由だ。長年声を上げられずに苦しんだ実情を考慮せず、法をしゃくし定規に適用したと言うしかない。

 これでは、人権救済など「法の正義」の実現を託された司法機関の役割にもとるのではないか。

 ただ、強制不妊手術を定めた旧法について、大阪地裁は「憲法違反」と明快に述べている。

 「子を産み育てるかどうかの意思決定を侵害し、極めて非人道的かつ差別的だ」と指摘し、憲法13条の幸福追求権や同14条の法の下の平等に反するとの判断を示した。

 そもそも、旧法を制定した議員立法自体が違法だったとも断じた。

 知的障害や精神疾患、遺伝性疾患を理由とする不妊手術は、1996年の法改正で制度が廃止されるまで約50年も続けられた。手術は約2万5千人に行われ、約1万6500人が強制だったとされる。

 昨年の仙台地裁も「違憲」と認定しており、国はもちろん、政策実施に関与した医学界や地方自治体にも猛省を促したと言える。

 だが、除斥期間については「提訴できない状況を国が意図的、積極的に作り出したとは認められない」とし、「機械的な判断を避けるべき」とする原告の主張を退けた。

 原告夫婦は、妻が妊娠9カ月目で胎児に異常があると言われ、帝王切開を受けた際に胎児を亡くし、知らぬ間に不妊手術を施された。

 もう1人の70代の原告女性は、日本脳炎の後遺症で知的障害になり、高校卒業後、母親に連れられて入院し不妊手術を受けさせられた。

 旧法の違憲性を指弾したのであれば、被害者の立場の弱さなど声を上げられなかった事情を踏まえ、救済の手を差し伸べるべきではなかったか。他の地裁は訴えに耳を傾け、踏み込んだ判断をしてほしい。

 妻とともに神戸地裁に提訴した聴覚障害者の男性が先月、結審を待たずに病死した。原告らの多くは高齢で、被害から長い歳月がたっている。被告の国はいたずらに争わず、争点を絞り込むなど、人道的な観点から裁判の迅速化を図るべきだ。

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