社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大は多くの学生にも深刻な影響を及ぼしている。

 「このままでは学費が払えず、学業を諦めざるを得ない」。親の収入が減ったり、アルバイト先を失ったりするなどして生活苦に追い込まれた学生から、こうした悲痛な声が上がっている。

 コロナ後の社会を担う若者の未来が奪われかねない事態である。苦境に目を向け、学びを止めないための息の長い支援が必要だ。

 病気や災害などで親を亡くした子どもを支援する「あしなが育英会」が先ごろ公表したアンケート結果によると、保護者の4割近くがコロナ禍による収入減に見舞われた。大学生の4人に1人が「退学を考えたことがある」と答えている。

 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査では、経済的事情で退学を検討している学生は約2割に上った。兵庫県内の私立大学の教員は「学生から生活保護の問い合わせや、休学、退学の相談を受けるようになった」と話す。

 日本の学費は国際的にもトップクラスの高さである。先進国の中でも高等教育への公的支出は極めて少なく、家計負担で支えられている。奨学金は有利子が主流で、返済期間も先進国で最長レベルにある。

 長期不況を受け、親の仕送りは1990年代半ばをピークに減り続けている。将来の返済を不安視して多くの学生が奨学金を利用せずアルバイト収入に頼っていた。そこへコロナ禍が発生した。

 政府はコロナの影響で困窮する学生に10万~20万円の現金給付を決めた。だが、対象は一部に限られ、金額も決して十分とはいえない。困窮学生に支援金を支給するなどの独自対応を始めた大学もあるが、学生からの要望が多い学費の減免には経営圧迫の恐れから消極的だ。

 大学の自助努力に頼るだけでは限界がある。学生の実態を把握し、きめ細かく救済するためには、国による大学への財政支援が不可欠だ。

 厳しい状況にある高校生の存在も忘れてはならない。ひとり親で高校生の子どもを持つ世帯の3割に、経済的理由から高校中退の恐れがあるとの調査結果が報告された。大学生向けと併せて、給付型の奨学金制度の創設や拡充を検討すべきだ。

 心理的なケアも欠かせない。大学では対面授業が一部にとどまり、サークル活動なども制限されているため、「孤独だ」「やる気が維持できない」などの声が広がっている。大学はこれまで以上に相談しやすい体制を整えてほしい。

 次世代が夢を諦めないですむよう多面的なサポートを急ぎたい。

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