社説

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 日本学術会議が、組織の在り方に関する中間報告を井上信治科学技術担当相に提出した。

 法は学術会議を「国の特別機関」と定める。現行の組織形態は活動の独立性や会員選考の自主性、国の支出による安定した財政基盤など、国を代表する学術機関(ナショナルアカデミー)として国際社会が共有する要件を全て満たすと結論づけた。

 政府や自民党内で強まる学術会議の「切り離し論」への異議申し立てと言える。提言機能の強化と組織運営の透明性を自ら高めることで国民の信頼を得る決意も示している。

 議論の発端は、菅義偉首相による学術会議会員の任命拒否問題だった。杉田和博官房副長官が推薦や任命に介入したことを裏付ける内部文書なども明らかになっている。

 だが首相は、任命拒否の理由や法解釈の妥当性について「人事に関すること」として説明を避けており、疑問を抱く国民は少なくない。最近は、学術会議の問題点を「国民も分かってきた」などと語っているが、ずれがあると言わざるを得ない。

 ところが、首相の意向を受けて自民党のプロジェクトチームがまとめた提言は、任命拒否問題の経緯には触れず、2023年9月までに学術会議を国から切り離し、新組織に移行させることを柱とした。

 独立行政法人や特殊法人を例示しているが、そうなればトップ人事や財政支援を通じて、政府の関与がさらに強まる恐れがある。高い見識と科学的根拠に基づいて政府に提言し、時には苦言も呈する学術会議の役割にふさわしいとは思えない。

 問題の本質から国民の目をそらし、ついでに政権の意に沿う組織に変えてしまおうという安直な思惑があるのではないか。

 こうした動きに対し、学術会議側は中間報告で、法制度を変えてまで形態を変えようとするなら、明確な「立法事実」が必要だと反論した。

 安倍政権下の15年、内閣府がまとめた学術会議の在り方についての報告書は、国の機関でありつつ独立性が担保されている「現在の制度を変える積極的な理由を見いだしにくい」としている。これを踏まえたもっともな指摘だろう。

 学術会議は1949年の設立以来、科学者が戦争に加担した苦い経験を踏まえ、政治からの独立と、軍事研究への参加に批判的な方針を貫いてきた。こうした歴史的な経緯を考慮せず、人事とカネを握って強引に服従を迫るような手法を見過ごすことはできない。

 菅首相は提言を受けて、年内に学術会議の在り方について方向性を出すという。その前に、任命拒否の理由を自ら説明するのが筋だ。

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