社説

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 世界全体を新型コロナウイルス感染拡大の暗雲が覆ったこの年末年始、欧州で大きな懸念が一つ解消された。欧州連合(EU)から離脱した英国が、難航していたEUとの自由貿易協定(FTA)締結に合意した。

 激変緩和の移行期間が終了し、今月1日に英国が「完全離脱」する直前の決着だった。

 英国が2016年6月に国民投票で離脱を決めて以来、国際社会は両者の溝が広がるのを不安視していた。英EUの結束が乱れれば、覇権争いを強める米中をいさめる役を務められなくなる。コロナ禍で世界経済が落ち込む中、欧州の混乱が回避されたことは評価できる。

 英国では感染拡大が収まらず、再度のロックダウン(都市封鎖)が実施されている。ジョンソン首相はEUのさまざまなルールに縛られない「力強い繁栄」を目指すが、当面はコロナ対策でEUとの緊密な連携を最優先するべきだ。

 英EU間の交渉は、英下院が離脱案を否決するなど英国内の意思統一にも難航を極めた。ジョンソン氏は、EUと何の取り決めもできなくても期日通りに離脱する強硬姿勢を掲げ、EUとの対立も一層深まった。

 最終的に交渉は、英国が漁業権でEUに妥協するなどで折り合った。英EU貿易は「関税、数量無制限」を維持する。

 しかし通関や検疫などが設けられ、ヒトやモノ、サービスの移動には制限がかかる。対EU貿易の一定の落ち込みは避けられそうにない。英国は日本やシンガポールなどとの貿易協定も締結したが、穴埋めできるかは見通せない。

 英国を取り巻く環境は、国民投票から約5年で大きく変わった。EUと距離を置き英国の離脱を支持していたトランプ氏に代わり、次期米大統領は国際社会の協調を重視するバイデン氏が就任する。香港の「一国二制度」を中国が踏みにじろうとしている問題では、旧宗主国の英国の対応にも注目が集まる。

 英国内の最新の世論調査では、離脱への評価がいまだ二分されている。自国民だけでなく、変化する国際情勢の中でもプラスの選択にするための戦略を、ジョンソン政権は描き直さねばならない。

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