社説

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 若い世代や困っている女性たちの切実な声に、政治が背を向けたことになる。失望を禁じ得ない。

 2021年度から5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」が、昨年末の閣議で決まった。

 最大の焦点となった選択的夫婦別姓は、導入に向けて前向きな表現が当初案に盛り込まれたが、「夫婦別姓」の文言そのものが削られた。大きな後退である。

 自民党内の反対派が別姓を巡る記述に猛反発したためだ。

 当初案は結婚前の名字を引き続き使えないことで実際に困っている国民の声を紹介し、「政府も必要な対応を進める」と記していた。現在の第4次計画より踏み込んだ内容で、議論の前進が期待された。

 ところが、反対派は「家族の絆が弱まる」「子どもがかわいそう」などと主張した。同姓でないと幸せになれないと言っているに等しく、一面的で理解に苦しむ。家族観はもっと多様であるはずだ。

 夫婦同姓を法律で義務付ける日本では、妻が夫の姓に変えるケースが圧倒的で全体の96%に上る。改姓に肯定的な人がいる一方、女性を中心に、仕事の支障になるなどの理由で姓を変えたくない人がいるのも当然だろう。

 時代を経て国民の意識も変わった。夫婦別姓を容認する人は今や多数となった。10~30代でその傾向はより顕著だ。最高裁も国会での議論を強く促してきた。

 政治は社会の変化を直視せねばならない。少子化が進む中、これから家族をつくる若者たちの意見に耳を傾けるべきだ。

 自民党内でも賛成派が勉強会を開き、若手議員からは「困っている人の問題を解決すべきだ」との声が上がった。賛否が割れているからこそ丁寧な議論を続ける必要がある。

 ここでも問われるのは菅義偉首相のリーダーシップだ。

 かつて首相は夫婦別姓を推進する立場で活動してきた。昨年11月の参院予算委員会でその点を指摘され、「政治家として申し上げてきたことには責任がある」と答えた。

 にもかかわらず、静観を決め込むのはなぜか。責任の果たし方を、女性や若者たちが見つめている。

 第5次男女共同参画基本計画は、政治家や管理職の女性割合について「2020年代の可能な限り早期に30%程度」と、従来の目標を先送りし、明確な年限を設けなかった。ここでも消極姿勢が目立つ。

 性別による不平等を解消し、個性を生かせる社会を築くには、不断の努力が要る。政治による後退や怠慢は許されない。

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