社説

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 政府の全世代型社会保障検討会議が、最終報告をまとめた。高齢者医療に対する現役世代の負担軽減と、少子化対策の拡充が柱となる。

 2022年には団塊の世代が75歳を超え始め、介護医療費の膨張は避けられない。社会保障の担い手となる現役世代の増加は見込めない中で社会保障制度を持続させるためには思い切った改革が不可欠だ。

 しかし最終報告と銘打ちながら、内容は既存政策の見直しが中心で、核心に踏み込んだとは言い難い。

 現役世代の負担軽減では、一定以上の所得がある世帯を対象に、75歳以上の医療費の窓口負担を現行の原則1割から2割に引き上げる。22年度後半から実施する。高齢者の医療費には現役世代の保険料からの支援金も充てられており、一定の軽減効果は見込める。

 ただその効果は支援金全体の1%程度にすぎない。現役世代1人当たりの負担減は年間千円未満にとどまる。しかも所得水準の線引きでは政府と公明党の案が乖離(かいり)し、最終的にトップ同士の会談で、中間の水準で政治決着する形になった。「本質的な解決に至っていない」との専門家の指摘は当然だ。

 懸念するのは、窓口負担の引き上げで受診を控える高齢者が増えることだ。政府は実施後3年間は自己負担の増加額を月に最大3千円とする緩和措置を導入する方針だが、医療現場の実態も見ながらきめ細かな措置をとる必要がある。

 少子化対策では、菅義偉首相の目玉政策である不妊治療の公的保険適用を22年度から実施し、それまでは現行の助成制度を拡充する。男性の育児休業の取得促進も盛り込んだ。待機児童解消に向け、24年度末までに新たに14万人分の保育の受け皿を整備するともした。

 一方で、財源を捻出するため高収入世帯への児童手当を廃止することも決めた。留意すべきは、国内総生産(GDP)に対する子育て支援などの社会支出の割合が、日本は先進国で低水準にとどまっている点だ。

 財政健全化が求められている中で、財源の議論は避けて通れない。社会全体で子育てを支えるためには、必要な財源を確保できるよう予算編成のあり方から見直す必要がある。

 安心して家族を持てるように安定した雇用をどう確保するか。少子高齢化が加速する中、公平に支え合う在り方をどう描くか。積み残された課題はあまりに多い。

 かつて高齢者向けが中心だった社会保障施策は、いまや全ての世代が対象となっている。限られたパイの奪い合いにならないよう、国民一人一人と危機感を共有しながら、さらに議論を深めねばならない。

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