耳を疑うような発言だ。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、女性理事増員の方針を巡って「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と述べた。
女性蔑視の暴言と言うしかない。性別をはじめあらゆる差別を許さない五輪の精神に反し、国内外から厳しい批判が集まるのは当然である。世論の強い反発を受け、森氏は発言を撤回し「深く反省している」と謝罪したが、辞任は否定した。
釈明会見では、質問する記者に「面白おかしくしたいから聞いているんだろ」と開き直るような態度も見せた。問題の本質に目を向けておらず、組織委トップとしての資質に欠ける。「五輪の顔」としてふさわしくない。直ちに辞任すべきだ。
海外では国内以上に問題視されている。米紙ニューヨーク・タイムズは「森氏の時代遅れの態度こそが本当の問題」とし、単なる失言にとどまらないとの見方を示した。五輪開催国として恥ずかしい限りである。
新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京大会は、感染の収束が見えず開催への慎重論が広がっている。安全な大会の実現に向けて参加各国の理解と協力が不可欠な中、問題発言で開催への機運がさらにしぼみかねない。森氏の責任は極めて重い。
深刻なのは、会議中に発言をたしなめる動きがなかったことだ。
森氏は会議で「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」と述べている。むしろ議論が活発化するのを喜ぶべきではないか。当然ながら、それは性別を問わない。
一方で組織委の女性委員については「わきまえておられる」とし、異論を述べないことを評価するような発言もあった。組織委の中に自由に議論できない空気があるとすれば、コロナ禍で新たな発想が求められる大会運営の支障になりかねない。
ネット上でも森氏の見方を疑問視する意見が広がり、ツイッターでは「#わきまえない女」との検索目印(ハッシュタグ)が付いた投稿が拡散している。日本社会の在り方を問う議論を呼び起こしつつある。
衆院予算委員会でこの発言について問われた菅義偉首相は「詳細は承知していない」と答弁した。男女共同参画を率先して進める政府の立場から、厳しく戒めるべきだった。
五輪の開幕まで半年を切った。感染状況を見極めつつ、開催への道を探る日本の動向を世界が注視している。森氏は問題の重大さをわきまえ、速やかに進退を決すべきだ。








