社説

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 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から、総務省幹部ら計13人が2016年以降、延べ39回の接待を受けていたことが同省の調査で分かった。タクシー券や手土産を受け取ったケースもある。

 国家公務員倫理規程は、許認可を受ける「利害関係者」からの金品贈与や接待を禁じている。長男が役員を兼ねる東北新社の子会社は総務省が許認可権を持つ衛星放送を手がけ、利害関係は明らかだ。

 同省はこのうち11人を処分する方針を固めた。ほかに山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に高額な接待を受けていた。特定事業者からの幹部接待が常態化していたことになり、厳正な処分は当然である。

 ただ問題の核心は、官僚が首相の身内を優遇し、行政の公正性がゆがめられたのではないかという点にある。安倍晋三前首相時代に国民の信頼を失墜させた森友学園、加計学園問題、桜を見る会の疑惑と同じく、官僚の忖度(そんたく)が疑われる事態だ。

 接待が集中した昨年12月は、子会社の衛星放送の認定更新直前だった。首相の権威を利用し、自社に有利な取り計らいを求める狙いがあったと疑われても仕方がない。

 利益供与が賄賂と認定されれば贈収賄事件に発展する可能性もある。処分だけで幕引きはできない。

 総務省は、当事者が否定したため行政への影響はなかったと結論づけた。身内に甘い印象は否めない。

 最も接待回数が多い秋本芳徳・前情報流通行政局長は、週刊文春の報道で問題が発覚した当初、利害関係者との認識はなかったと述べ、放送事業に絡む話題は「記憶にない」と答弁していた。だが、音声が公開されると一転して認めた。

 きのう国会質疑に応じた谷脇康彦、吉田真人両総務審議官も同様の答弁に終始した。曖昧な答弁で逃げ切ろうというなら甚だしい国会軽視である。総務省は第三者を入れて事実関係を再調査し、国会での全容解明に協力する必要がある。

 菅首相は国会で、公務員の違反行為に長男が関係したとして陳謝した。一方で「長男と私は別人格」と距離を置くが、それは通用しない。

 首相は総務相を務め、同省に強い影響力を持つ。長男は総務相秘書官を務めた後、東北新社に就職し、接待の半数に同席していた。倫理規程を熟知しているはずの官僚らが、同社の度重なる誘いに応じたのは首相を意識したからではないか。

 政治家の世襲を批判してきた首相が、身内優遇を黙認するのでは国民の信頼は得られない。総務省に徹底調査を指示し、全容解明に努めるべきである。身内も含めた振る舞いを反省しなければ疑惑は晴れない。

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