社説

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 大阪府内の生活保護受給者らが、国などに対し保護費の基準額引き下げ処分取り消しなどを求めた訴訟の判決で、大阪地裁が引き下げを違法と判断した。

 同種の訴訟は兵庫など29都道府県で約900人が起こしている。昨年6月の名古屋地裁判決は、引き下げ判断は不合理ではないとしたが、2件目の判決で原告側の勝訴となった。

 生活保護は憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度だ。受給者は200万人を超える。

 2013~15年の安倍政権時に基準額が引き下げられ、暮らしへの影響が問題になっていた。厚生労働省は争わず、減額措置を直ちに見直すべきだ。

 生活保護費は08年のリーマン・ショック後に急増した。「民主党政権で増えた」と批判する自民党が、12年の衆院選で支給水準の減額を公約に掲げた。

 引き下げは、13年8月から、3年間で平均6・5%、最大で10%に及んだ。根拠にしたのは08年を起点とした物価下落だが、この年は原油などの高騰で食料品価格が上がり、消費者物価指数が1%を超えた特別な年だったと、判決は指摘した。

 また、総務省公表の消費者物価指数(マイナス2・35%)でなく、厚労省が独自に算定した指数(同4・78%)を改定に使ったことにも疑問を呈した。

 独自の指数は、テレビやパソコンなどの教養娯楽用品を基にしており、全体の下落率が大きくなる。しかし、いずれも生活保護世帯での支出割合は低い。

 これらを踏まえ、判決は「客観的な数値との整合性を欠き、判断の過程や手続きに過誤や欠落がある」と断じた。国は重く受け止める必要がある。

 生活保護費の引き下げは、受給者のマイナスイメージにつながり、受給を控える人が増える原因になったとされる。新型コロナウイルスの感染拡大で生活基盤を失った人が増加する中、「最後のセーフティーネット」としての生活保護の役割は大きくなるばかりだ。

 判決は他の訴訟に影響を与えるだろう。厚労省は政権の意向に左右されず、客観的な統計を重視し、困窮者の実情や専門的な知見に基づく公正な制度としなければならない。

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