社説

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 「あるべき家族像」を他者に押しつけ、異なる意見に耳を貸そうとしない。強権的ともいえる自民党国会議員らの行動が明らかになった。

 保守派を自任する衆参50人の議員有志が、選択的夫婦別姓への反対を呼びかける文書を地方議会に送っていたのである。送付先は47都道府県議会議長のうち約40人に上る。

 ここ数年、政府に対して夫婦別姓の実現を求める意見書を採択する地方議会が増えている。価値観が多様化し、夫婦同姓の強制をやめてほしいとの声が広がっているためだ。現状を不当とする訴訟も相次ぎ、最高裁は国会での議論を促してきた。

 「伝統的な家族観」を重んじる議員らは、国民意識の変化を受け入れたくないのだろう。文書送付は与党の国会議員による地方議会への圧力にほかならず、容認できない。

 50人連名の文書は、夫婦別姓は家族単位の社会制度の崩壊を招く、子どもの氏(うじ)の安定性が損なわれかねない-などと訴える。驚くことに、ジェンダー平等の旗振り役である男女共同参画担当相の丸川珠代氏が大臣就任前とはいえ名を連ねていた。

 衆院内閣委員会で認識を問われた丸川氏は「個人としての思いは脇に置き、国際社会にどう受け止められるかに力を尽くしたい」と述べた。個人的に夫婦別姓には反対だが、五輪相を兼務する立場から、男女共同参画に取り組む姿勢は見せるという趣旨だろう。

 あきれるほかない。菅義偉内閣が性別による不平等の問題を軽んじているとみられても仕方がない。失望し、憤る女性は多いはずだ。

 国の調査でも夫婦別姓への賛成は反対を上回る。若い世代ほど容認派が多い。「国際社会の視線」が気になるのなら、変化を求める国内の意見に向き合うのが先ではないか。

 夫婦別姓を巡る民法改正の議論は、自民党の一部の強硬な反対で前に進まない。それどころか、昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から夫婦別姓の文言そのものが削られ、大きく後退した。

 兵庫県議会では昨年3月、夫婦別姓導入への法改正を求める請願が不採択とされた。委員会で可決されたが、本会議で最大会派の自民党が反対し一転、不採択となる展開となった。そのため今回、文書は送付されていないが、県議会の姿勢には多くの県民が首をかしげるだろう。

 結婚前の名字を引き続き使えないことで仕事に支障が出たり、実家の姓が絶えるため結婚に踏み切れなかったりする例が報告されている。少子化の一因との指摘すらある。

 切実な声に背を向け続けてはならない。「押しつけ」をやめ、冷静で丁寧な議論を始めるときだ。

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