社説

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 今夏に開催予定の東京五輪・パラリンピックに海外から来日する観客について、政府が受け入れを見送る方向で調整を進めている。

 国内の新型コロナウイルスの感染状況は厳しい。首都圏4都県に発令された緊急事態宣言は2週間延長された。兵庫など関西3府県では解除されたものの、神戸市などで飲食店への時短要請が続く。変異株が検出された地域も拡大している。

 通常であれば五輪には200を超える国と地域から1万人以上が参加する。これに加え、海外から多数の観客が入国すればどうなるか。政府の慎重姿勢は当然だろう。

 大会組織委員会の橋本聖子会長は、政府、東京都、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会の代表との5者協議で、3月中に方針を決める考えを示した。断念するならちゅうちょせずに判断し、それもできるだけ急ぐべきだ。

 一方で国内の観客は入場させる見通しだ。各会場の入場者数の上限は4月中に判断するという。観客数は国内イベントの上限規制を参考にするというが、一般の競技大会などと同じ扱いでよいだろうか。

 東京五輪では史上最多の33競技339種目が42の会場で行われる。上限制限を設けたとしても、かなりの観客数となる。その後にはパラリンピックが続く。全国各地の人が首都圏と行き来して、それがさらなる感染拡大につながる可能性は否定できない。

 大会中、最も懸念される問題の一つは医療体制の逼迫(ひっぱく)である。

 選手や関係者らの中でクラスター(感染者集団)の発生などがあれば、医療現場が混乱する恐れがある。一般市民の医療にも影響を及ぼしかねない。五輪の開催について国民の理解を求めるなら、観客の上限規制にとどまらず、無観客での開催を真剣に検討する必要がある。

 同時に、医療を中心に可能な限り安全な大会運営の方針を固め、早期に国民に示してもらいたい。

 今月25日には福島県で聖火リレーがスタートするが、リレーに加わる予定だった著名人の辞退が相次いでいる。感染につながる行為を避けたいとの思いがあるとみられる。感染状況によっては、実施方法の見直しも柔軟に行わねばならない。

 政府は五輪・パラリンピックに海外や国内各地からの観客を集め、観光需要を回復させることを目指してきた。無観客になればチケット収入などは得られない。

 しかし五輪後に感染状況が悪化すれば、国全体の経済の停滞はより深刻になるのではないか。政府には大局的な視点で、何が最も国益になるのかを見定めた判断を求めたい。

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