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 新型コロナウイルス感染拡大の長期化が、女性の雇用や暮らしに深刻な影響を与えている。

 女性は非正規雇用が多く、人員整理の対象になりやすい。緊急事態宣言による店舗の営業時間短縮や、売り上げ減少がもたらす経済の悪化が女性を直撃した。家計の不安に加え、孤独感にもさいなまれている。政府による支援は待ったなしだ。

 総務省の労働力調査によると、アルバイトやパートなど非正規で働く人は1月時点で2058万人と前年同月から91万人減り、11カ月連続で減少した。減少は男性が22万人だったのに対し、女性は68万人だった。

 女性の就業が多い宿泊や飲食サービス業の業績悪化が雇用調整につながったとみられる。離職した人が男性の3倍という厳しい実態は看過できない。

 厚生労働省の有識者検討会の報告書は、2008年のリーマン・ショック時に比べて女性非正規労働者への影響が「強く生じている」とする。子育て中の女性が仕事と家庭を両立させやすいような、テレワーク可能な求人開拓の必要性を指摘した。

 深刻なのは、厚労省が1月に発表した20年の自殺者数(速報値)が、前年確定値より750人多い2万919人に上ったことだ。男性は減ったが、女性は前年より885人多い6976人と2年ぶりに増え、合計では11年ぶりの増加になった。

 背景には雇用の不安定さに加え、コロナの長期化で家庭内のストレスが増大していることがある。ドメスティックバイオレンス(DV)被害も増えているという。居場所をなくし孤立を深める女性のケアは不可欠だ。

 菅義偉首相は5日の記者会見で「女性の自殺者が増えていることに大変心を痛めている」と述べた。非正規で働く女性やひとり親世帯に対し、希望に添った就業に向けた資格取得などの研修機会を広げるという。

 3月中にも緊急の支援内容をまとめるとしているが、対策は遅すぎたぐらいだ。

 政府は、企業が支払う休業手当の一部を補填(ほてん)する雇用調整助成金を拡充したが、非正規従業員に支払われないケースが相次いだ。窮状にあえぐ女性の声に耳を傾け、実効性のある支援を急ぐべきだ。

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