2019年7月の参院選広島選挙区を巡る公選法違反罪で起訴された元法相の衆院議員河井克行被告が、無罪主張から一転して買収を認め、法廷で議員辞職を表明した。
元法相は新人候補だった妻の案里氏を当選させるため、地方議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。前代未聞の大がかりな買収事件の構図が明確になった。
カネの力で投票行動を左右しようとする買収行為は、民主主義の根幹を揺るがす重大な犯罪だ。法秩序を守るべき法相経験者として、政治不信を高めた責任は極めて重い。
疑惑発覚後、元法相夫妻は公の場での説明を避け、逮捕、起訴されても国会議員にとどまった。この間、国会活動はないに等しいが、議員報酬を受け取り続けた。
一部の買収で共謀したとして有罪判決を受けた案里氏は、先に議員辞職した。確定した判決は、元法相が買収を主導したと認定している。辞職は当然であり、遅きに失したと言わざるを得ない。
元法相は初公判から一貫して買収の意図を否定していた。だが、受け取った議員のうち94人が違法性を証言し、言い逃れできない状況に追い込まれたというのが正直なところだろう。
「認めるべきは認めることが、長年の支持者に対する政治家としての責任の取り方だと考えるに至った」との言葉が本心なら、法廷だけでなく国会や記者会見などでも真実を語り、全容を明らかにするべきだ。
残された最大の疑惑は、巨額買収を可能にした原資である。
広島選挙区では自民党本部が広島県連の反対を押し切り、現職に加えて案里氏を擁立した。夫妻側には、落選した現職の10倍に当たる1億5千万円が党本部から提供され、うち1億2千万円は税金が基になる政党交付金と判明している。
公判では、党本部からの入金が原資だったとする元会計担当者の証言が明らかにされた。税金が買収に使われたとすれば、問題はより深刻だ。提供した資金の使い道を明らかにする責任は自民党にもある。
ところが、二階俊博幹事長は「他山の石として、しっかり対応しなくては」と語った。人ごとのような態度にあきれるほかない。
元法相は菅義偉首相とも近い関係にあった。首相は資料が検察に押収されたとして、資金提供の経緯などを究明する姿勢を見せていない。
菅内閣発足半年で「政治とカネ」の問題による議員辞職は3人目となる。根底に身内に甘い政権の体質があるのではないか。疑念を払拭(ふっしょく)するため、首相自ら党に徹底調査を指示し、全容解明に努めるべきだ。








