社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪の聖火リレーが、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地である福島県からスタートした。

 聖火は五輪の開会式がある7月23日まで全国を巡る。兵庫県は5月23、24日に回る。コロナ禍における安全な大会運営の試金石となる。感染対策を徹底し、大会の理念である「復興五輪」を改めて世界に発信してもらいたい。

 聖火リレーは本来、開催都市以外の地域に大会の幕開けを告げる役目を担う。ところが感染は収まらず、緊急事態宣言は全面解除されたものの、変異株の広がりもあって国民の視線は冷ややかだ。聖火リレーの著名人ランナーの辞退も相次ぐ。

 出発式は一般客を入れずに簡素化した。沿道の人には密集回避やマスク着用、拍手での応援を呼びかけるほか、インターネットでのライブ中継の視聴を推奨する。感染を防ぎつつ機運を盛り上げるという難しい運営になるが、官民が連携し、安全最優先で完走することが責務だ。

 五輪・パラリンピックは、海外からの一般観客の受け入れを断念することが決まった。選手や国民の安全を考えると、国内への自由な入国を認めるのは現実的ではなく、受け入れ断念はやむを得ない。

 その結果、各国から集まった人が交流し、国際平和に貢献することは難しくなる。五輪本来の意義が十分に果たせないのは残念だが、選手第一の原点に戻り、五輪の理想を描き直す機会にしたい。

 大会組織委員会の橋本聖子会長は「今の時代にふさわしい方法で人々をつなぐことができるよう、具体的な仕掛けの検討も進める」と語った。動画サイト、会員制交流サイトなども駆使し、競技の感動や五輪の魅力を世界の人々が共有できるよう知恵を絞る必要がある。

 国内観客数の上限については、政府のイベント制限基準に合わせ、会場収容人数の50%にする方向で検討が進んでいるという。五輪は42会場で、史上最多の33競技339種目が行われる。全国から多くの人が行き交い、新たな感染拡大を招かないとも限らない。万全な対策はできるのかと不安視する人は少なくない。

 共同通信社による今月の世論調査では、今夏の五輪開催を望む人が23%だったのに対し、中止すべきとする人は、2月調査を5ポイント上回る40%だった。開催する場合、無観客がよいとする人も40%だった。

 政府や組織委はこうした声に耳を傾け、感染状況を見極めて、無観客開催の判断も視野に入れるべきだ。安全な運営の方法を再検討し、国民の理解を得なければならない。

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