社説

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 無料通信アプリLINE(ライン)の個人情報が、中国国内から閲覧可能な状態になっていた。利用者の名前やメールアドレス、電話番号などである。

 LINEは国内で約8600万人が利用しており、政府機関や地方自治体、企業なども情報提供などに使っている。証券取引やオンライン決済などにも拡大し、情報インフラの一翼を担う存在になった。

 閲覧が許されていたのは業務委託先である中国の関連会社で、データを保管する日本国内のサーバーに30回以上アクセスしていたという。

 中国は国家による情報統制を強化し、法律で企業などに協力義務を課している。LINE側は情報漏えいは「確認していない」(出沢(いでざわ)剛社長)とするが、個人情報を預かる企業として無防備というしかない。

 LINEは東日本大震災を機に開発され、スマホによる安否確認などに用いられた。文字で会話するチャット機能に加え、「スタンプ」と呼ばれるイラストやアニメの交換で若者らの利用が一気に増えた。

 多くの企業がLINEでの情報提供などで顧客の囲い込みを始め、政府や自治体も行政手続きの案内や若者向けの相談窓口などに用いる。新型コロナウイルスのワクチン接種の予約システムも開発され、官民で活用の幅が広がっていた。

 それだけに多くの利用者が不安を感じている。政府機関や自治体ではサービスを一時停止する動きが見られる。情報保護の懸念が表面化した以上、やむを得ない対応だろう。

 個人情報保護法は、個人情報を海外に移す場合、利用者の同意を得るか、日本と同等の情報保護体制を確認するよう求めている。しかし、LINEの運用指針には中国からのアクセスは書かれていなかった。

 問題が発覚したのは、ヤフーを傘下に持つZホールディングスが、LINEとの経営統合を前に疑問点をただしたことがきっかけだ。

 利用者の画像・動画ファイルが韓国内のサーバーに保管されていることも判明し、明確な説明のないまま情報が海を越えて移転されている実情が浮き彫りになった。

 出沢社長は謝罪した上で、中国からのアクセスを遮断したと明言し、運用指針を改定すると述べた。当然である。認識と姿勢の甘さを反省し、情報保護のあり方を組織全体で見直さねばならない。専門家らの第三者委員会で課題を洗い出し、検証結果と改善策を公表すべきだ。

 総務省や政府の個人情報保護委員会もLINEに詳しい報告を求めている。利用者が納得し、安心できる情報保護のルールや仕組みを、国も早急に確立する必要がある。

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