社説

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 ミャンマー国軍のクーデターから2カ月が過ぎ、抗議行動への武力弾圧はエスカレートする一方だ。デモ参加者への銃撃など流血の事態が続き、死者は500人を超えた。

 重傷を負った市民を燃え盛るタイヤの炎に投げ入れて殺害する。民家に押し入って住民に容赦なく銃を向ける。常軌を逸した国軍の行為は、もはや「虐殺」と呼ぶしかない。

 犠牲者には5歳の幼児など多くの子どもが含まれている。凄惨(せいさん)な暴力の拡大に背筋が寒くなる。

 非武装の国民を攻撃したことで国軍の信頼は失墜した。対立する少数民族にも空爆を加えるなど、国内の緊張は高まる一方だ。このままでは内戦状態に陥りかねない。

 国民の「不服従」で経済活動も停滞している。国軍は直ちに暴力を停止し、民主政治の回復を求める国民の意志に従うべきである。

 100人以上が殺害された先月27日は国軍記念日に当たり、記念式典や軍事パレードが行われた。国軍は「妨害すれば射殺する」と警告し、街頭などで批判の動きを見せた人々に銃弾を浴びせた。

 暴力で加害者は感覚が次第にまひし、心のバランスを失うとされる。兵士らはデモ参加者らの頭部を狙って銃撃しているといい、過激な行動に歯止めがかからない状況だ。

 米欧など12カ国の参謀総長ら軍トップは、暴力停止を呼び掛ける共同声明を公表した。「軍の責務は国民の保護で、国民を傷つけることではない」と国軍に強く自制を求めている。同じ軍人として看過できない事態と映ったのだろう。

 共同声明には日本からも自衛隊の制服組トップが名を連ねた。茂木敏充外相も「強く非難する」との談話を発表し、アウン・サン・スー・チー氏ら民主派の解放を促した。

 ただ、ミャンマーには400以上の日本企業が進出し、政府は経済支援などを通して国軍とも関係を維持してきた。包囲網を強めれば欧米諸国と距離を置く中国やロシアの影響力が増す懸念もある。

 とはいえ、ミャンマーとの貿易協定を停止し、国軍幹部や軍関連企業の制裁に踏み切った米バイデン政権などと比べ、慎重な対応にとどまっていることは否めない。

 菅義偉首相は今月訪米し、バイデン大統領と会談する。自由や人権の価値観を共有する国際社会の一員として、ミャンマーとのパイプを持つ日本が外交力を発揮する時だ。

 在日ミャンマー人の支援団体は、日本政府に対し、国軍への圧力強化とともに一般国民への人道配慮も要請した。日本滞在を希望する人には在留資格を認め、弾圧から逃れた人も積極的に受け入れるべきである。

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