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 日本銀行は金融政策を点検し、修正した。

 長年にわたる大規模な金融緩和策は近年、弊害が目立つ。しかし、コロナ禍で落ち込んだ日本経済を下支えするには緩和策をさらに続ける必要があるとの判断から、「副作用」を和らげる対症療法的な微修正にとどまった。

 脱デフレへ、黒田東彦(はるひこ)総裁の掲げる2%の物価上昇目標の達成がさらに遠のく中、現行の政策をやめるにやめられない日銀の苦しい立場を反映しているといえる。

 副作用への対策は主に三つある。上場投資信託(ETF)は年間12兆円の上限のみ残し、買い入れ額の目安を廃止する▽金利の引き下げで経営に打撃を受ける銀行への支援策をつくる▽長期金利の変動幅を広げる-という内容だ。

 ETFは幅広い株式銘柄を束ねた投資商品のことで、日銀は積極的に購入してきた。株の買い支えを通して経済を活発化する狙いだが、市場の価格形成機能をゆがめ、バブルを生んでいるとの批判があった。

 今後は株価の値上がり時には購入を控え、年間原則6兆円としていた目安をなくす。日銀は既に日本株の事実上の最大保有者となっている。これ以上の「爆買い」は日銀も避けたいはずである。今回の修正は限定的とはいえ当然だ。

 ただ、既に50兆円に上る購入済みのETFを今後どう処分するかは議論されなかった。大きな課題は、またしても積み残された。

 銀行への支援では「貸出促進付利制度」を設け、事実上の補助金を出す。コロナ対応の融資実績に応じて、金融機関が日銀に預けている当座預金に金利を上乗せする。日銀がマイナス金利をさらに引き下げれば連動して補助金が増える仕組みだが、企業への貸し出しが促進されるかは不透明だ。

 長期金利は「プラスマイナス0・2%程度」としていた変動幅を、「プラスマイナス0・25%程度」とする。値動きが大きくなれば、国債の取引で金融機関が収益を得やすくなるという。

 2013年に就任した黒田総裁の任期はあと2年となった。人々の期待に働きかければ物価が上がり景気も良くなる-との考えに基づく「異次元緩和」は、9年目を迎える今に至っても効果に疑問符が付く。

 「日本経済の真の課題は物価ではなく、生産性の向上だ」と指摘する専門家もいる。手詰まり感が強まっている空前の緩和策を無理に続ければ、さらなるひずみが懸念される。

 日銀は金融政策の「正常化」を念頭に置きつつ、コロナ禍への対応に全力を注がねばならない。

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