社説

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 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の施行から5年が過ぎた。自衛隊と米軍の一体運用が常態化し、連携する相手をオーストラリアや欧州に広げる動きもある。

 日本が攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃されれば武力行使に道を開く安保法は、戦後日本の基本姿勢である「専守防衛」を逸脱し、違憲だと多くの憲法学者が指摘している。「戦争放棄」や「戦力不保持」などを定めた憲法9条と矛盾する疑いがあるためだ。

 それが解消されないまま、既成事実が積み上げられていく状況に歯止めをかけなければならない。

 この5年、集団的自衛権の行使に当たる活動こそなかったものの、自衛隊の任務は大幅に拡大した。問題は、その詳細が国民に公表されていないことだ。

 典型は、自衛隊が平時から米軍の艦艇などを守る「武器等防護」である。2017年に2件、18年に16件、19年に14件と実績を重ね、昨年は25件で過去最多となった。防衛省は具体的な活動内容を米軍の運用に直結するとして明らかにしていない。

 武器を使用して他国の要員を助ける「駆け付け警護」の任務が付与された16~17年の南スーダン国連平和維持活動(PKO)では、自衛隊の現地での活動内容を防衛省に報告する日報の隠蔽(いんぺい)が発覚した。

 国民のあずかり知らないところで自衛隊の活動がなし崩し的に広がり、武力行使への歯止めがきかなくなる懸念はぬぐえない。

 安倍晋三前首相は、法案審議で「最大限情報を開示する」と答弁していた。政府は約束通り、情報を開示し、丁寧に説明するべきだ。

 一方で、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す現実も直視しなければならない。中国は沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返し、北朝鮮も弾道ミサイル開発を進める。

 だが、米国などと一体となって「抑止力」を強めるだけでは、東アジアの緊張は高まるばかりだろう。自衛隊が偶発的な戦闘に巻き込まれるリスクが増すとの指摘もある。

 情勢が緊迫する中でこそ、日本は冷静に現状を分析し、中国とも対話を重ねて、地域の安定に貢献する平和外交に努めねばならない。

 立憲民主党は、基本政策で「安保法の違憲部分を廃止」と明記した。与党の公明党も集団的自衛権の行使には慎重とされる。

 安倍前政権は、憲法改正の議論が必要な解釈変更を閣議決定で済ませ、安保法を強引に成立させた。違憲訴訟が各地で起こされるなど国民には反対論が今も根強い。

 成立過程にも問題がある安保法は今からでも見直す必要がある。

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