社説

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 2年前に白血病と判明し、長期療養から復帰した競泳女子の池江璃花子(りかこ)選手が、東京五輪代表に決まった。日本選手権の女子100メートルバタフライで優勝し、400メートルメドレーリレーの選考基準を満たした。

 実戦に戻ってからわずか7カ月余りで五輪の出場権をつかんだ。信じられない快挙である。20歳のアスリートが果たした驚異的な復活を心から祝福したい。

 「白血病を克服し、逆境をはねのけた」とロイター通信が伝えるなど世界からも賛辞が贈られた。

 池江選手は2016年リオ五輪の100メートルバタフライで5位入賞、18年アジア大会では6冠に輝き、数々の日本記録も打ち立てていた。重い病だと分かったのは19年2月のことだ。病魔に勝つ決意をネットで発信したが、「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」と心情を漏らしたこともあった。

 闘病を経て初めてプールに入ったのは昨年3月だった。五輪は新型コロナウイルスの感染拡大で延期が決まり、開催1年前となった7月、国立競技場で「逆境からはい上がっていく時には、どうしても希望の力が必要」とメッセージを発した。そして8月には、東京都特別大会の50メートル自由形に出場した。

 そこからの「第二の水泳人生」は目を見張る回復を描く。今年2月、東京都オープンの50メートルバタフライでの優勝に続き、日本選手権を制して手にした五輪切符である。「24年のパリ五輪を目指す」としていた自らの目標も早々と超えてしまった。

 試合後、池江選手は「努力は必ず報われるんだと思った」と嗚咽(おえつ)をこらえながら話した。体重は一時、15キロ以上も落ちた。通常の生活に戻るのも大変なことだ。練習のつらさは並大抵のものではなかったに違いない。重ねた努力に敬意を表したい。

 さらに「五輪に向けてタイムを伸ばしていく」と話す強い精神力には脱帽するしかない。

 朗報に接した他の患者や関係者から「希望の星だ」などの声が上がった。さまざまな苦しい立場にいる人たちが勇気を得たことだろう。

 日本選手権では、豊岡市出身の小西杏奈選手が女子100メートル背泳ぎで優勝し、400メートルメドレーリレーの五輪代表に内定した。

 ただ、こうした選手の活躍に心を動かされた国民も、コロナ禍の中で開く五輪への不安をなくしたわけではない。選手らの検査態勢や医療対応の確立を急ぎ、観客数の制限についても冷静に判断しなければならない。国民への説明も不可欠だ。

 政府や大会組織委員会は、何よりも選手や観客の安全が最優先だということを肝に銘じてもらいたい。

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